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彼と"また、今度"の約束をして
4日経った。
公園には行かなかった
怖くて行けなかった
買い物の帰り道
ちらりと公園を覗いてみたら
彼に似た黒服の横顔がベンチに座って見えた
僕は思わずそちらへ走った
はぁはぁとその人物の前まで駆け寄る
駆け寄った相手は冬生さんじゃなかったけど
どことなく彼に似ている
「……あの貴方ですか?雪実くんって」
「…はい」
「良かった。やっと渡せる」
そういって白い封筒を僕に差し出してきた
「兄から、雪実くんっていう男の子に渡して欲しいって頼まれて」
「…そうですか。冬生さんは…」
受け取りながら
次の言葉に喉をつまらせる
僕が言いたいことが分かったのだろう
「兄は…3日前天国に旅立ちました」
わかっていた。
わかっていたけど突きつけられる現実に脳が嫌だと言っている。
「兄、亡くなる直前に雪実くんの名前呼んでました。苦しい筈なのに必死にそれを雪実くんに渡してくれと、俺に頼んできたくらいです」
また涙が出てしまった
自分はこんなにも涙脆い人間であったか
「俺、弟の鳴海です。兄のお墓はここにあります。どうか行ってあげてください」
そういって手書きの地図を渡された。
ありがとうございます、といって
地図と白い封筒をもって彼が居る所へ走った。
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