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少し肌寒い
夜の公園に彼の声が響き渡る

透き通った声が

聴いてる最中に涙があふれた

なぜだかわからない
歌詞が切なくて胸が締め付けられる

息苦しい

彼が歌い終わった後
僕は涙を止められずにいた

「雪実くん、泣かないで」

病弱な腕が僕を抱き寄せて
これでもかってくらい強く抱かれた

彼は暖かかった
全てにおいて暖かいひとだ

体温が伝わる
生きてるんだ。
僕も彼の背中に腕を回した


「雪実くん、すき」

ああ、ダメだ。
もっと涙がでた。
自分でも止められない

「大好き、愛してるんだ」

彼と過ごし感じていた息苦しさの正体
僕にもわかった気がした

僕も彼が好きなんだ。

嗚咽で、言葉が出しにくい

「…っ、ぼ、くも、うっ、すきです」

「うん」

「ヒック、しんだら、っだめです、よ」

「俺だって死にたくないよ、ずっと雪実くんとこうしていたい」

涙でぐちゃぐちゃな顔を彼の肩口に押し付け
大泣きしている僕の背中を優しく擦った
雪実くんっと呼ばれて彼の方を向く

「最後のキスをしよう」

そう言われて唇を寄せてきた

「んっ、ふ、ゆきさっ」

こないだのきすとは違って
舌をつかった情熱的なきすだった

「ぁ…んん」

「っは、ゆきみくん、ゆきみくん、離したくない」

長く感じたきすが終わった直後
彼に引き寄せられる

耳元でトクントクンと普段よりは早いだろう
心拍数をきくとまた涙がつーっと目尻からこぼれた
 
この命はもうすぐ止まってしまうのか

僕が代わりになってあげられればいいのに
なんで、どうして彼なんだ
僕なんかより彼を生かした方がいいに決まってる
神様も馬鹿だ

どれくらい長い間抱き合っていただろう
僕らは気が済むまで抱き合った

「ゆきみくん」

「なんですか…?」

「また、今度会おうか」

「………もちろんです」
 
強がりな彼がついた嘘
多分、もう今度なんてものはない

そんな嘘に気付かないふりをした

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