海でなくした懐中時計


(従兄弟の息子高校生×保育士)


俺には同棲している子がいる

今日は早番だったから16時あたりには保育園を出て家に帰り只今18時ちょい。今までぐだぐだとだらけてたらもうこんな時間で二度時計を見ました。


夜ご飯を作っている最中。
久々に新しくエプロンを買ったから今日はいつもよりやる気が…。新しいノートの1ページは丁寧に書きたくなるような、そんな感覚と似ている。


ガチャっと玄関から聞こえてきた音で帰宅したことがわかった。

玄関に足を運び声をかける

「おかえり、りぃくん」

従兄弟の護(まもる)とその妻が亡くなってはや二年
その息子である莉央(りお)くん

ひょんなことから俺が引き取ることになりました。
これもなにかのご縁ですね。

「…。」

相変わらず無言なりぃくんは俺のことをちらっと見るとそのまま俺の横を通り抜けて自室へ足を向けた。横を通るとき強いシトラスの香りがして、あれうちこんなに洗剤つよかったっけなんて思ってた。 

バタンという音がなる。
シーンとした空間


「はぁ…」

自分のため息が静かに溶けた
今まで一緒に生活してずっとこんな感じ
反抗期にしては長すぎるし、嫌われてるんだろうなあ


そんなことを考えてキッチンに戻る
もう最後の盛り付けだけだったからお皿にのせてダイニングテーブルに置く。ちらっとりぃくんの部屋のドアを見るけどこちらに来る気配なし。

ご飯は孤食の方が多いような気がする
いつからか二人で食べることはなくなった
寂しい

自分で作っておきながら食べる気は無かったから作ったオムライスとサラダにラップをかける。卵スープは…いいや温めてもらえば。


そのままトボトボ歩きリビングに置いてあるソファーに仰向けに寝転がった
エプロン取るのもめんどくさい


すこしのうたた寝をすることにした
目を瞑る




意識が浮上した時、違和感を感じた

片手を掴まれて、てか握られてる?
どうやらこちらを覗いてる模様…っていってもりぃくん以外この家には居ないけどね


なに、なんか痛いことでもされるの…?
日頃の愚痴とかこぼされるとか

ソファーに少しだけ座っているりぃくんが動くとソファーが軋む


え。


何故か首筋に顔をうずめられチュッというリップ音
しかも一度ではなく何度も。つよいシトラスが鼻腔をくすぐる。


え、え。目を開けたくてもこんな状況で開けられるわけもなく。

潔く狸寝入り
いや、潔くもないな。笑

「…日和さん」

ポツリと俺の名前を呟いたりぃくん

久々に名前、というか声を聞いたような
返事とかの「ん」とかなら聞くけど

ちょっと内心焦ってる俺をよそにりぃくんは俺の横腹を案外ガッチリとした大きな手ですーっと撫でて頭を首筋に擦り付けてきた

そう、ぐりぐりと

すんっと匂いをかがれて恥ずかしさの余り赤面しそう
体臭は嗅ぐものではありません。

「いつも有難う。」

「……」

ちょ、なんだよこれ

「……好き」

吐き捨てるように紡がれた言葉

え?

「…俺が同性愛者って言ったら日和さん引く…?」

りぃくんが問いかけたけだど、答える者はいない
シーンとした空間が生まれる


暫くしてりぃくんがソファーからおりて
バタンという音で部屋から去っていったことが伺えた

去る前に頬を撫でられて首筋にちりっとしたものを与えられた。
間違いなくキスマークだと思うんです俺。彼女いない歴2年になりますけど、この感覚はそうだ。


パチリと目を開く
色々、問題があり過ぎて何から突っ込めばいいのやら


「…嘘でしょ」

俺のそんな言葉が小さく響いた
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