おれのおうじさま
(不良×美人)
※高校生の喫煙描写あり
ミントアッシュカラーの髪色に目は緑が混じっている俺のことをクラスの人は皆〈王子〉などと呼ぶ。ただのクオーターだ。
外見が珍しいからと他とは違った扱いを受けることだってある。別に気持ちは分からなくもないけど正直いって王子と呼んだり特別な扱いをされるのは嫌だ。
俺はみんなが思ってるほど〈王子〉らしくないし、もちろん、いつもはそれらしく周りに振舞っているがどちらかというと捻くれててとても器の小さな人間だ。
「はあ。なんでこうなったんだろ」
煙草を片手に手すりに身を預けた。煙が一筋となりやがて宙へ消えていく。
屋上から見る景色を別に綺麗だなとも思うことなく本当に見つめているだけ。煙草はもう自分にとっては必要不可欠。本数も結構多い。病的だな、と自身を嘲笑する。
口が寂しくて再び煙草を口元に持って行き吸おうとしたときだ。
「似合わねぇな」
「え…」
指の間から消え去った俺の煙草はとある人物の口に寄せられてた。深く吸ってゆっくり吐き出すその行為は年齢に合わず様になっている。
吃驚しすぎて言葉も出ない。
「…まっず。どこの?」
「…キャスター」
「あますぎ」
そういって口直しをするように自身の胸ポケットからラッキーストライクを取り出してライターで火をつけた。カチャッという音が微かに聞こえた。
「…王子様でも煙草吸うんだな」
その呼ばれ方に苛立った。俺だって好きでそう呼ばれてるわけじゃないのに。
「そう呼ぶな」
こちらをじっと見つめて咥えた煙草を一旦遠ざける
「は、何お前。王子って呼ばれんの嫌いなの?」
「…うるさい」
「つか、いつもそう呼ばれてニコニコしてるくせに、なにそれ。ウケる」
「……」
チラッと小馬鹿にする相手を見ると耳にピアスはじゃらじゃら、制服を着崩し髪も人工的に明るく染められ、俗に言う不良というわけだ。顔も申し分ない。俺よりモテるだろうって顔。この学校のやつなら誰でも知ってる人物。
少し無言が続いた。それを破ったのはこの不良だった
「塁(るい)」
「っ」
突然のことに素の反応が出てしまった。
久々に自分の名前を呼ばれて嬉しかった。
「あ?照れてんの?」
「…違う」
「何気に王子って頑固なんだな」
「うるさい」
「なあ、俺の名前知ってる?」
「…斉藤」
「違う、名前だっての」
「…まお」
クッと笑う斉藤はやっぱ男らしくて。
「正解。 おれ真桜っつーんだ」
それが斉藤真桜
彼との出会いだった。
*
あれからよくつるむようになって。
と言っても屋上だけでしか話さないけど。
そんなある日。ちょうど俺が体育の時間、喘息を起こした時のこと。
真夏の保健室は少し蒸し暑い。
おまけに喘息ときたものだ。辛すぎてしかたがない。
こんなときに保険医は出張だし最悪
体育の時間、ちょっとやばいなと思って自主的に保健室に行きますと言ったはいいものの保健室にきて一層酷くなった気がした。
紙袋は無いかとあたりを探すけどなくてさ、これ以上探す気力もなかった。
「はぁ はぁ ン”ッ 」
死ぬ。
近くにあったベットに転がった。今回本気で死にそう
「随分つらそうだな」
ふ、と後ろから声がして。振り返る必要もなくそれは真桜の声だ。
こちらに近づく気配がした。
少しベッドが揺れたこと、微かな音。
ベッドに腰を掛けたのが分かる
「ほら、ちゃんと呼吸整えろ」
「はぁ はぁ はっ 」
横向きで寝転がってた俺の背中を擦る
その手が普段とはあり得ないほど優しくて少しこそばった。
しばらくして収まる。
俺の性格のせいで有難うとは言えなかった。はずい。
「…なんでここに」
「さっきたまたま見た。」
「そう…」
「…おまえさ…」
そんな言葉のつづきが知りたくて後ろに振り返る
相変わらずピアスじゃらじゃらの奴がいた。
「くわれんぞ」
意味がわからないほど俺は純粋ではない。共学といえ男女比は8:2、男同士で付き合う奴も少なくはない
「まさか。さすがにそれは」
「あのなぁ…」
「いてッ」
デコピンをかまされる
「馬鹿なやつ」
「はあ?…って、ちょ」
片手で頬を撫でられ、ありえない程に顔を近づけられる。なんなんだよ。
「俺このまま塁をどうとでもできるんだけど?」
なんならキスでもしとくか?と。
「なっ…」
新手のいじめですか。ここまで近くで見られるとさすがにどうしていいかわからない。
だって本当に睫毛の本数かぞえられるんじゃない、ってレベルだよ。
「…冗談。ときめいた?」
「は、」
なめてるこいつ。絶対そうだ。
「ふざけんなよ。ばーか。」