「あ〜、疲れた・・・」
冬。
部活が終わって教室に戻る途中、苗字先輩に出会った。
「あ、財前」
「あ、先輩。今帰るとこっスか?」
「うん。財前も部活終わったの?」
「はい」
「そっか、お疲れ様」
話しながら先輩は支度を済ませ、コートとマフラーを身に着ける。
「じゃあ、わたし帰るね。バイバイ」
「あの、せっかくなんで一緒帰りません?」
「・・・・・は?」
「どうせ一人なんやないんですか?」
「どうせって何さ」
せっかく会ったのにもったいないと思い、思わず誘ってしまった。
しかし、そこでクラスメイトの後輩、
つまりは顔見知り程度の関係しかない俺から誘われるのはやはり迷惑やろか。
少し不安になって、先に一言付け足しておく。
「嫌やったら、ええですけど」
「別に嫌じゃないよ」
「なら、一緒帰ってもらえます?」
「うん、別にいいよ」
「よっしゃ!せやったらもう少し待っとってください、ダッシュで支度するんで」
苗字先輩の返事があまりにも嬉しくて、
待っといてもらえるように伝えてからもうダッシュした。
どうやって準備するのが一番早く終わるやろか。
そんな事ばっか考えとった。
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