始まりの日
あの日、地獄を見た
悲鳴、飛び散る血、倒れた人達
自分も跳ねられて朦朧とした意識の中でただ地獄を見ていることしかできなかった
それからも地獄は続いている
「少年」
腰の半分位まで海に入っていると後ろから声を掛けられて振り返った
「海水浴か?確かに夜は涼しいけど水温の変化が凄いからやめた方がいいぞ」
「…おぼれて死にたいからいるんですよ」
「そうか」
煙草を吹かす若い男がこちらに向かって歩いてくる
靴も脱がずに海に入り側にまでやって来た
「じゃあその命くれないか?」
にこにこ笑いながら目の前に立つと肩をぽんぽんと叩かれた
肩にしがみついていた色々な人達が落ちて離れていき軽くなった
「うそ…」
「その眼、色々な世界が見えるだろ?たまに持ってる人がいるから探してたんだ。丁度跡継ぎ探してたから良かった」
「あとつぎ…?」
「そう」
よいしょ、と抱えられて海から出ていく
「うち心霊探偵事務所やってるんだが同じ眼を持つ奴が居ねーから困ってたんだ」
男の眼を見るとそこには自分と自分に伸びてくる手が見えた
「まあ、慣れたらオンオフができるようになるから安心しな」
手を蹴り飛ばして陸に上がる
「改めて。俺は一条棗、君は?」
「ぼくは
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