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悲しい復讐者の記憶

召喚されて最初に見たものは地獄だった
触媒にされたらしい男が血を吐きながら暴れているのを他の奴等が押さえていた

「静かにしろ!!」
「おい!俺がマスターだ!言うことを聞け!」

血を吐く男がこちらを見た
美しかったであろう瞳は濁り、血の涙を流しながら
それでも抗おうとする姿

「おい、願いは何だ」

周りの人間が願いを怒鳴るように告げる
それに混ざるように小さく聞こえた

「クハハハハッ!その願い!叶えてやろう!!」

男を抱き上げ宝具を発動させる
血飛沫と絶叫、悲鳴が場を支配した



男を抱えて外に出る
長い間触媒として「魔眼」を使用されてきたらしく脳や体、魂さえ消耗しきっていた

「話はできるか」

口から血が零れ、空気が抜ける音がする
もう目も見えていないらしく伸ばした手が空を切った
それでも諦めず手を伸ばしマントを掴んだ

…できます
「ならいい。次は何だ」
…願い?
「ああ。俺を召喚したのはお前だ、マスター」
……じゃあ

手を握ってください



命の炎が消えていく
それでもこの男は幸せそうに笑う

僕はずっと触媒として生かされてきたから、手を握ってもらえたのは初めてで。痛くないですか?

ほとんど力の入っていない手を握る
指先も壊死しているのか黒ずんでいて冷たい

触媒として使い古されて、ひとりで死んでいくと思ってました
だからあなたに会えて良かった

呼吸が浅く、小さくなっていく

でも…あなたを、この目で一目見たかった

そう消えるように呟くと息を引き取った



亡骸を燃やす
例え死体でも触媒にされるのはあまりにも残酷だ

「…俺のマスターはお前だけだ」

燃え盛る炎に向けて、呟いた










『ごほっごほっ』
「もう少し我慢して。すぐに病院に行くから」
『はーい』

「俺のマスター」が居た
あの日よりも幼かったが見間違えではない
あの瞳が閉じられようとしているのを見て、手を伸ばした

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