20話(海と怪異と復讐者:1)
夏だ!海だ!
『っだぁー!!ざけんな!』
夏の夜の海
パーカーにショートパンツ姿でひとりで立っていた
『もう嫌だぁ〜帰るぅう!!』
半べそをかきながら海岸を歩く
月が無かったら何も見えなかったよ
『せんせぇ〜!いぞ〜さ〜ん!』
しゃがみこんでベソベソ泣く
もう18歳だろとか言うなよ!
こうなったのも今朝来た依頼のせいである
「夜の海に現れる心霊現象を解決してほしい」と依頼が来たのだ
水に入る可能性があるし終わったら花火しようとパーカーにショートパンツ、サンダルで現地にやって来たがまさかの先生達とはぐれた、というか気が付いたら全員居なくなってた
『うっ…ひぐっ…ばかー!』
落ちていた貝殻を掴んで海に投げる
海に帰れ!ばか!
『も゛ー!やだー!』
スマホと眼鏡は海水でアウトだから置いてきてしまったしつらみ
『うぅ〜…』
海からは手がおいでおいでしているし海面に人立ってるしこっち来てるし!!
『こっち来んなばかぁああ!』
貝殻を手達に向かって投げた
すると運良く?悪く?ぶち当たってしまったらしい
海から上がってきた
『ンワ〜!!』
バシャバシャ波打たせて青白い顔の人達が海から上がってきた
砂に足が取られて逃げられない
目の前にまで迫り手を伸ばしてきた
『ひぃっ! 』
黒い炎が目の前で燃えた
手達が海に帰っていく
「おい」
『っ!』
振り返ると暑そうな格好をした男が立っていた
「あまり相手にするな。気付かれると危険だ」
『はわわわわ…』
ビビっていると手首を掴まれ立ち上がらされた
「とりあえずここから逃げるぞ」
『うひぃい〜( ´;ω;`)メソメソ』
無理矢理腕を引かれ波打ち際から離れる
海も怖いがこの人も怖い!
『やめっ!
煙草とコーヒーの匂いがして無意識に安心できた
…お兄さん、誰ですか?』
「…俺は巌窟王だ」
『がんくつおう』
「ああ」
『呼びにくい!』
「…エドモンでいい」
月夜の海辺をふたりで歩く
先生達は見当たらない
『エドモンさん、何で僕と一緒に居てくれるんですか?』
「お前はひとりでいいのか?」
『嫌です』
ふと気が付いて右手を見るといつの間にかエドモンさんと手を繋いでいた
え?え?と思っていたが別に気にならなかったのでそのままにしておいた
誰かと手を繋いでいると、とても安心したから
『エドモンさん、エドモンさんって一体何者なんですか?』
「気にするな」
『はぁ』
ふたりで歩く
ふと見上げると金色の瞳と目が合った
『うん?』
「…いや」
髪を優しく撫でられた
何故か涙が零れるので見られないよう俯いた
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