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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




10話

先生は再び旅に出た
「その魔眼封印の眼鏡、ガタが来てるから新しいの作る材料取ってくるね〜」と言い残して

『はい、一条心霊探偵事務所です』
「お願い助けて!!」
『すいませんがいきなり叫ばないでください鼓膜破れます』
「あ、すいません…」

背後から物が壊れる音がしてるし依頼人がパニック状態で話にならないのでそちらに向かおうかと聞くと「自宅は嫌だ」と言うので指定されたファミレスに向かうことになった

「依頼か?」
『うん、以蔵さんも来て』
「わかった」



「ちっさ!」
『すいませんね』
「こっちが所長!?ちっさ!」
「すまんのぅ、このこんまいのが所長じゃ」
『ア゛ァ!?』
「ひぃっ」
『すいません、お話聞かせていただけますか?』

今回の依頼は「ポルターガイストを解決してほしい」
電話の時聞こえたように今自宅は物が壊れて大変らしい

「上から物が降ってきて…」
『あの、お聞きし辛いのですが…猫、飼ってました?』
「はい?…ああ、最近…交通事故で亡くなって…!」

わっ、と泣き出してしまったので以蔵さんが慰める
突然テーブルに乗っていたお冷やのコップがひとりでに落ちて割れた

『あわわわ(;´゚д゚)』
「うぅう…タロ…」

メニュー表が滑り落ちて角が太ももに直撃した

『いたっ』
「タロ…タロごめんね…」
「な、泣きなや…」

コップを処理しに来てくれた店員さんのエプロンがほどけて床に落ちる

『タロ!止めなさい!』

落ちかけていたお冷やのグラスが止まる

「タロ…?」

返事をするようにお冷やのグラスが転けて溢れた水が彼女のスカートを濡らした

「こら!タロ!」
『この子いい性格してますねっ!』

最後のお冷やグラスがひとりでに波打つと水飛沫が飛んで来る

「タロがいるんですね」
『死んだことに気付いていないんですよ。だから見て欲しくて悪さをする』

先程から水飛沫が飛んで来る
眼鏡の調子が悪いからか茶白猫がお冷やグラスに手を突っ込んで水を払う仕草をしているのがよく分かる

「いい性格しちょるわ」
「私には見えない…」
『じゃあ、目を、閉じないで』

目を閉じて眼鏡を外す
意識を集中、範囲を設定
目を開けた


所長と呼ばれた少年はあまりに幼く、偽物かと思ったし、タロがいると言われた時はよくある手口だと思ったが

にゃーん

タロがいた
あの日のまま、綺麗な姿でお冷やのグラスに手を突っ込んで水を飲んでいた
こちらを見て「見ている」と気付いたらしく水飛沫を飛ばしてきた

「タロ…」
「ね、猫がいる…」

グラスを片付けに来てくれた店員さんもタロを指差している
見えている

にゃあぁ〜ん

すり寄ってくると尻尾で顔を撫でた
いつもの仕草だ

にゃん

タロが透けて消えていく瞬間
グラスに猫パンチをして溢した


「ありがとうございました」
『いえいえ、お別れできて良かったですね』

死んだことに気がついていなかった猫は主人に構ってもらえないことに拗ねて物を落としてアピールしていた
「構って」「名前を呼んで」
それがあの子の願いだった
依頼料は特に何もしていなかったので断ったが「あの子に会えたお礼」と正規の依頼料と

『しばらくは夏野菜カレーかな…』
「近所に配るしかないじゃろ」

段ボールいっぱいの夏野菜
トマトが積んでも転がり落ちる…

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