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とある教育係の記憶

初めて家で見たときは驚いた
あまりに無表情だった

「この子の家族になってください」

保護者だという棗が頭を下げた

「この子は家族に捨てられて家族がいません。俺では家族になれなかった。だから、どうかお願いします」

由行と呼ばれた子は棗の服の裾にしがみついてぼんやりとどこかを見ていた
目は焦点を結んでいる時よりそれ以外の方が多かった


「おい」

絵を描いていたので声を掛ける
こちらを見ているようで見ていない

「何しゆうがか?」

ぼー…っと考える仕草をした後絵を片付けて移動していった
不思議な奴だと思った

棗が不慣れな手つきで精一杯作った食事を一緒に食べない
見えない所でこそこそ食べる
食べているのを見られたと分かると必死に皿を庇う
髪に付いたゴミを取ろうと手を伸ばしたら頭を庇った
「精一杯、愛情をかけてほしい」
そう言われた理由が分かった気がした


自分に睡眠は必要ない、眠るとしても夢は見ない
が、一応眠れるので眠っていると夜中に由行が起き上がりベッドから降りて部屋の端で小さく丸くなって眠った
だから側で一晩中護衛をした
魘されたら髪をすいて夜中に起きたら「ここにいるから」とドアが開かないように背中で押さえていた
しばらくしていると段々距離が近くなってきた
焦点も合ってきた
食事も一緒に取るようになった

「ご飯おいしい?」
『…あんまり』
「煙草止めるわ」

煙草で味覚がダメになる上に食欲が失せては由行と一緒に食事が取れないということで彼は煙草を止めた
勉強は棗が、護身術は自分が教えたが体を動かすのはめっきり駄目なようだった(投げたボールを追いかけて転ぶ)
だから家族として、兄として、用心棒になることに決めた

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