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7話(理想郷:4)

「早く手を取って」
「いかん」

指先が触れかけた瞬間、後ろから声が聞こえた
振り返ると家族だった人達は居なくなっていて瞳の紅い男性とスーツに刀を携えた男性が立っていた

「よう見てみい、そいつは何じゃ」

再び正面を見る
顔がどろどろにとろけた何かが手を差し出していた

「ひいっ!」

恐怖で尻餅をついた
何かがゆっくりと体を屈ませ顔を覗き込もうとしてくる
怖くて腕で顔を覆う


ドスっ、と何かが突き刺さる音がした


「すまんが、こいつはわしの大事な弟分でなぁ」

砂の入った袋を切るような音がする
断末魔が響く
頭をポンポンと叩かれ目を開けると以蔵さんが立っていた

「大丈夫か?」
『以蔵さん…』
「わしだけ見ちょれ」

抱えあげられ悲鳴を上げる何かから離れる
入れ替わるように先生が近付いていった

「さて、今なら君に届くね」

先生が悲鳴を上げ蠢く何かに語りかける

「由行、以蔵、目を瞑って」
「おう」

目を覆われる
先生の「目」は強力なため例え範囲を設定していても余波は来る
だから余波でやられないないため目を閉じないといけない
しかしどうやって…

「『ゆきちゃん、もういいんだよ』」

ただ一言

あ、あぁ…」

ゆっくり目を開けた
男を、世界を包んだ闇が砕けて剥がれ落ちる
音を立てて崩れていく
「救世主」が「ひとりの少女」に戻っていく

「あぁ…愛しいあの子が…迎えに来てくれた…」

砕けて、砕けて
足元にもヒビが入る

『!』
「しっかり掴まっちょれ!」
『先生!』

先生が懐から取り出した何かを少女に渡す
少女が涙を流しながら微笑んだ

「ありがとう」

足元が砕けた

『うわぁあああ!』










目が覚めた

「おはよう、いい夢見られた?」
『先生…』

先生も以蔵さんも起きていた
頬をつねる、痛い

『終わったんですか?』
「ああ。『彼女の世界(理想郷)』は崩壊した」

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