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表恋


ある春の日の昼下がり。
暖かな日差しのもと、基地にも色とりどりの花が咲き誇っていた。
白一色の世界は何色もの世界になり、桜が絶え間なく降ってくる。

そんないい日に庭の物陰に隠れてるのは俺、九。
覗き込まれない限りバレないような場所だ。
しゃがみこんで物陰に入り込む。手には小さな撫子の花束。手汗と、何度も持ち変えたせいで少し萎れてしまった。
しかし、大切なのは花束ではない。これはただの添え物に過ぎない。



俺は今日、霧島さんに想いを告げる。


ずっと好きだった。初めて会ったときから。
恥ずかしながら一目惚れというやつだ。

霧島さんの海色の瞳が好きだ。
風に揺れる亜麻色の髪の毛が好きだ。
透き通るような白い肌が好きだ。
母親のような包容力があるとこ好きだ。
不器用な優しさが好きだ。

俺はあの人の全部が好きだ。






こっそり赤城さんに霧島さんの予定を聞いた。
本当は兵器が恋心を抱くなど厳禁。
恋愛となるなどもってのほか。


それが分かっているはずなのに、赤城さんはみんなの予定が予定表を黙って机に置いた。
そして霧島の部分を指でなぞった。


「嗚呼いけない。私としたことが予定表を置きっぱなしにしてしまってました。
いけない、いけない。」
そう言って赤城さんは何事もなかったかのように紙を仕舞った。
俺は静かに頭を下げ、部屋を出ていった。






さて、そろそろ長門さんに資料を渡す為に霧島さんがここを通るはずだ。
霧島さんが近付いてきたらまず前に出て、それで……………

念のためにと、ちらりと物陰から様子を窺うと…
なんてこった!!もう近くまで来てる!!

長い茶髪、 第一種軍装に黒タイツ、黒いパンプス。
手には紙束。

間違いない…!!
脳内シュミレーションできてないけど行くぞ俺!!

歩いてくる霧島さんの前に飛び出す。
彼女がびっくりした様子が雰囲気で伝わってくる。
俺は目を瞑り、深々と頭を下げ、花束を差し出す。
そして、彼女が何かを言う前に俺が全力で言葉を発する。
俺はやるぞ!!


「俺は貴女が好きだ!!
海色の瞳が好きだ!!
風に揺れる亜麻色の髪が好きだ!!
母親のみたいな包容力があるとこ好きだ!!
不器用や優しさが好きだ!!
俺は霧島さんを世界一愛してる!!

だから…だから!!
俺と付き合ってください!!!!」


一息で言い切り、再び深々と頭を下げる。






…………………………。
一生に一度の覚悟で挑んだ告白から十数秒。
彼女からの反応はない。


………もしかして駄目な感じ…?
やべぇ俺しばらく立ち直れないかも…


「ごめんな」


頭上から聞こえてきたそれ。
やっぱり駄目だったんだ。
視界が滲んできた…でもここで泣いたら卑怯だ…耐えなきゃ…辛い。


「私、霧島じゃないからそれにお返事出来ひんわ」





……………え?
聞きなれた関西弁に恐る恐る顔を上げてみる。
俺の目の前に立っていたのは………


「は、榛名さん!?」


琥珀の瞳。
それと同じ色の風に揺れる髪の毛。
透き通るような白い肌。
第一種軍装に黒タイツ、黒パンプス。
ニヤニヤ顔の榛名さんが目の前に立っていた。

目の色まで見えてないし、髪の毛は光を浴びて普段より明るく見えていた。風で前髪の分け目は変わっていた。
しかも全く同じ服装…。

こんなんってあり…?

目の前の榛名さんはもう笑ってる。


「九、あんた霧島のこと好きなん?どんまいやなぁーwww
ごめんなぁ、私でw
霧島忙しそうやったから、届けるくらい、手伝ったろうと思ったんよー」


そう言って目に涙を溜め、爆笑しながら俺の肩をバシバシ叩く榛名さん。
人の気も知らないで…
こっちは一生に一度の覚悟で告白したのにぃぃぃいい!!



フラれ涙が悔し涙に変わる頃、散々笑った榛名さんは来た方向を差しふわりと笑った。


「霧島なら資料室で本とにらめっこしてるで。
せっかくの花が萎れきらへんうちに早よ行き。
…まっすぐな想いやったらちゃんと伝わるから。」


優しく押された背中。
榛名さんに深々と頭を下げ、資料室へ走った。






息を切らせて着いた資料室前。
額にはうっすらと汗が浮いている。
それを袖で拭い、ドアノブに手をかける。

冷たいドアノブをぎゅっと握り、力を込める。
動悸はヤバイし息切れ酷いし顔には汗が伝う。

どんだけ見た目がカッコ悪くても想いが伝わればいいんだ…!!


「失礼します!!」


勢いよく開けたドアの先。
沢山並ぶ本棚の奥。窓際の日差しが入り込む場所。
窓を開けているせいで髪がふわふわと揺れる。
椅子に座って手元の紙と本と交互でにらめっこしているのは霧島さん。

俺の声に気付き、こちらを向く彼女。

海色の瞳が俺を捉える。

嗚呼、やっぱり綺麗だな…

俺が何も言わないのを不思議に思ったのか、霧島さんが口を開く。


「九どうした?私になにか用か?」


その問いに静かに頷くと、ドアから離れ、彼女に近付く。
彼女は目の前。早まる動悸。緊張が走る。



そして俺は一生に二度目となってしまった告白をする。


「霧島さん!!」

「なんだ?」



「俺は霧島さんを世界一愛してる!!
一生大切にします!!
だから

俺と付き合ってください!!!!!!」

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