Photo Diary
日々の思い出、などの説明文。
no title
2014.10.31 Fri 20:10
・人間社会が吸血鬼をほとんど滅ぼしかけてるくらいの時代
・時の教皇はあれやこれやの手を使い国民の信頼を一身に集めてる
・吸血鬼撲滅のための教皇軍がある
・国民が被害にあわないように対策網とかも敷いてる
・吸血鬼は美人だし身体能力高いし不死身だけど生き物ではないというか生き物であるために体内で作られるはずの種々の成分を作れないから相応の姿を取るために必要な成分は外から摂取しないとならない。そんなわけで人間の姿を取るためには人間の血肉が必要。別に動物の血摺って動物になっとけば良いじゃんって話だけど元々吸血鬼の実態は死にきれなかった人間の霊魂なので人間の姿でいたいらしい。幽霊が肉体を持ったというかそんな感じの曖昧な存在。
・吸血鬼達は国の外れにある鍾乳洞の中で巨大な石筍をくり貫いて屋敷を造り住んでる。
・吸血鬼はなんか難しい術式刻んだ弾丸で心臓撃って動きを封じて再生するまでに炎で焼けば死ぬ。日光と同じくらい崇高な人間が無理。
以上の前提を踏まえて雑記スタート。


吸血鬼の存在のなんたるかがほとんど暴かれてしまった時代、人間社会はもはや彼らを恐怖の対象としなくなり吸血鬼社会は衰退の一途を辿っていた。そんな中、最後の抵抗とばかりに吸血鬼一派がとある農村を壊滅させた事件をきっかけに、時の教皇は国民に吸血鬼の殲滅を誓い一掃用の軍隊を立てる。教皇を影で支えているのは司祭枢機卿であり教皇の実の弟ニコラス(仮)。教皇庁の支持率はこの二人の実績のお陰で上々。国民は一丸となって吸血鬼撲滅のために旗を掲げてる次第。
特にニコラスは吸血鬼を一網打尽にすることを使命みたいにしてて、吸血鬼殲滅に特化した精鋭軍隊つくること考案したりそれを実際に育てたり、吸血鬼に関する対策網張ったり、何より当人の聖職者としての退魔の力も強力なので滅びかけてる吸血鬼にとっては脅威だった。プライドを粉砕された吸血鬼達は復讐も兼ねて生き残る為にもどうにか彼を黙らせようと画策する。そこでニコラスの唯一の弱点として挙げられたのが彼の養子のリベア。彼はリベアを溺愛してるようだったので連れ去れたらいい人質にできる。でも聖職者の領域に踏み込むことって吸血鬼達にとっては自殺行為というか、相容れない存在である聖職者の領域に入るためには曖昧な存在から確固とした存在に変わらないといけない訳で、そんなことをしたら吸血鬼は吸血鬼でなくなってしまう。まぁ言わばそういった曖昧な存在を拒絶するための結界が聖職者の領域の周囲には張られてる。特に術式とかは無く、解除法といえば家主を殺すくらい。それか直接家に招かれるか。だから侵入するためにはできる限り自分の存在をねじ
曲げて曖昧なものから確固としたものに変化させるしかない。当然反動は大きいし消えちゃうかもしれないから誰もそんなことはやりたくない。というわけでロムがやらされることに。
さて、嫌な仕事を任されてしまったロム兄さんはとりあえず色んな文献を読んで自分を洗脳しながら思考を聖職者のそれに近いものに変えていくという手に出る。所詮現世に依存した霊魂なので精神さえ取り替えてしまえば忌むべき聖職者は親類になるし結界だと思われたものは結界でなくなる。
ところで、吸血鬼になった経緯として恋人が実は吸血鬼でその人に噛まれて死んで生まれ変わったっていうのはよくある話だけど、ロムが吸血鬼になった経緯もまさにそれで、でも彼が愛した人は吸血鬼の住処が教皇軍に攻められた時に捕まって見せしめに処刑されてる。以来彼はかなり辛気くさくなったらしい。元から辛気くさかったけど。
ロムがお偉いから虐められるのは、彼が吸血鬼のくせに人を殺したり傷付けたりすることに臆病で血吸ってないのに伯爵位貰うくらい吸血鬼としてのスキルが高くて上位階級に疎まれるからで、性格が大人しい分余計嫌がらせに損な役を回されてる。だけどロムには補佐役のお爺さん吸血鬼がいて、その人はいつも肩持って色々協力してくれてるから、ロムもそれでいいと思ってる。ちなみにこの爺さん、名前はブブという。
そんなこんなで精神の取り替えを成し遂げて外的な退魔の力に作用されなくなったロムは、次に対象の行動パターンを探るためにニコラス邸に忍び込むことにする。
吸血鬼は動物の血を吸うことで一時的にその動物に変身することが出来る。というわけでロムはそこらへんの鼠を捕まえて食し、鼠に変身して屋根裏から屋敷に侵入。しばらく観察してると、どうやらニコラスはリベアのことを立派な神の御使いにすべく厳しく躾てるらしいことがわかる。リベアは国民には見た目も中身も天使のような子として知られていたけど実際には義父の厳しさに夜ひとりで泣いてばかりいる様子だった。
ロムは人間の肩を持つなんて御免だけど、若干気にもなるので様子見にリベアとの接触を図ってみる。例のお爺さん吸血鬼、ブブ爺に頼んで飼い猫の血を溜めてもらい、黒猫に変身してリベアの部屋の窓辺に行ってみると、窓のすぐ横にあるベッドでリベアは絵本を読んでいた。黒猫に気付くと彼はベッドから起き上がり珍しげに見つめて音をたてないようにそっと窓を開け、部屋に招き入れる。窓からベッドの上に降りた黒猫にリベアが見せたのは子どもらしい無邪気な笑顔そのものだった。それから何日かロムは黒猫の姿でリベアの部屋の窓辺に通い、夜明けまで一緒に過ごした。ニコラスの邸宅の周りには常に六人の守衛が配置されており、看守はリベアの部屋の真下にもいたがいつも居眠りをしていたのでリベアは黒猫を家に入れるのを秘密にすることができた。リベアは不思議にも毎晩表れては寛いでいく猫に絵本を読み聞かせたり少しだけその日の出来事を語ったりした。膝の上で丸まってる猫の背中を撫でながら「きみはどこから来たの?」「名前はなんて言うの?」などと話しかけた。
いよいよ上からの圧力が重たくなってきた頃、リベアの元に訪れると彼は毛布にくるまって泣いていた。どうやら今日のお義父さんは一段と厳しかったらしい。夜が開ける頃、リベアは溢した「ぼくもきみと一緒に何処かに行ってしまえたらなぁ」
ロムはまだ迷っていた。このまま義父の家にいてもリベアは辛いだろうし、だからといって連れ去ってしまえばどうされるかわからない。彼を隠せる場所も知らない。悶々としているうちにいつの間にか人間に肩入れしてることに気づきハッとした。吸血鬼の存続を捨ててまでリベアを救う理由は無かった。
その晩、ロムは彼を拐う計画を実行に移す。リベアが眠った頃を見て彼の部屋に訪れる。今日は黒猫の姿じゃない。しばらくは夢の中にいられるように催眠術をかけ、そっと抱えて窓を出た。諸聖人の日の前夜のことだった。
吸血鬼の住処はこの吉報を待ちわびる軍勢で溢れていた。既に勝利を核心して浮かれてる輩もいた。ロムが帰ると公爵も侯爵も寄ってきてリベアを見て喜んだが完全に獲物を狩る目を隠しきれていない。この子はニコラスを誘き出す為の餌にしないとならないので食うわけにはいかないのだが幼子の血など旨いに決まってるので食いたくなっても仕方ない。リベアはあっという間にお偉方に連れていかれて檻の中に入れられてしまった。
リベアが目を覚ますと四肢には錠が掛けられ檻の回りには獣の目をした吸血鬼達がわらわら集まっていた。皆一様に涎を垂らしている。リベアが怯えていると吸血鬼の群れを掻き分けてヨボヨボの老人が現れた。ブブ爺である。ブブ爺は群れに向かってなんだかよく聞き取れない声で何か言い始めた。「子どもを怖がらせるもんじゃあない」説教を垂れ始めたのである。カチンときた吸血鬼達はブブ爺に向かって拳を振り上げた。ブブ爺、危ない!次の瞬間、老人に拳を上げた吸血鬼は地面に伏して伸びていた。そう、この爺さん、只者ではないのである。あっという間に襲い来る群集を叩き潰し、荒ぶる不死鳥のポーズで最後の一人が逃げていくのを見届けるとくるりと振り返り先程までの殺気がまるで嘘だったかのような穏やかな表情でリベアに微笑んで見せた。
リベアがこちらの手に渡ってから吸血鬼達の士気は鰻登りだった。皆、ニコラスとあわよくば教皇も処刑して人間バイキングをしよう的な話で勝手に盛り上がっている。
そんな中、ロムはといえば任務の間一時的に排除していた己の同一性が、自分のなかに取り込んでいた聖職者の精神に攻撃を受けて死にかけていた。曖昧な存在が無理矢理確固とした存在になろうとした反動でもっと曖昧な存在になった、といった具合である。その上ここ数日動物の血ばかり飲んでいたのだから、もはや人間の姿を取ることさえままならずカオスでドロッとした影になってしまっていた。医者(一応いる)のところからも逃げ出して部屋に籠り項垂れてる始末。
ブブ爺の申し出により捕虜を捕らえておくための牢屋からロムの屋敷に移されることになったリベアはそれを見て驚いたが恐怖することはなかった。彼は見ず知らずのロムに対して自分に出来ることを探した。そうしてブブ爺に言った。「ロムにぼくの血を飲ませてあげて」
ブブ爺はお猪口一杯分くらいのリベアの血を抜き取りロムに飲ませた。お陰でロムは少しずつ元の状態に戻っていった。血を飲んだとき彼の意識は朦朧としていたが、あの血はリベアのものだったかもしれないと後で思った。
真っ暗な鍾乳洞の中、蝋燭の灯りだけが頼りのこの場所でもリベアは楽しんですらいる様子だった。不気味な置物を珍しがってみたり屋敷の中の黒猫を見つけて捕まえて引っ掛かれたりしながら「ぼくの家にも毎晩黒猫が来るんだ」などと言うから適当にいなしておく。
だけど彼をそう長く置いてやることが出来ないのは明らかだった。吸血鬼が世を騒がせてる時代、夜に子どもが拐われたと聞いて吸血鬼の仕業だと思わない輩などいるはずがない。もし誰もそう思わないのであれば、立ち入られたのがよりにもよって枢機卿であり国で最も退魔の力の強いニコラスの家だからだ。だがいくらロムが無音のうちにリベアを拐ったとしても、間もなく「子供を抱えて屋根の上を飛んでく影を見た」などという噂が流れて教皇軍は怒りのうちにこの洞窟に攻め入るかもしれない。どのみち吸血鬼のことは滅ぼすつもりなのだからそれが今でもおかしくはないのだ。あのニコラスならばリベアのことなど「既に吸血鬼に殺されていた」と言ってのけるかもしれない。あとはニコラスが、自分の家に吸血鬼を入れることを許したと認めればいいだけ。そうなれば、ロムのやることは決まっていた。
一方教皇庁では会議が開かれていたがその一席でニコラスは神妙な面持ちでゲンドウポーズを決めていた。彼はリベアを失ったことに相当なショックを受けていたが、同時にリベアを拐ったのは吸血鬼ではないと確信していた。あらゆる魔を排除するために些細な雑念さえ切り捨ててきた己に近付くことのできる魔などありはしない。だからニコラスは教皇庁として全国民を容疑にかける気にもなったが、これまで兄と共に築いてきた国民の信頼を失うわけにはいかなかった。彼は自分の力や栄光は国民無くしては有り得ないことを重々承知していた。これを失えば、吸血鬼を葬るという悲願は達成し得ないのだ。
ニコラス兄弟は幼い頃に親を吸血鬼に殺されて生き別れ、別々の環境で過ごした。その後兄は神父になり弟はグレたが、再会してからは兄弟揃って教会を構え最終的にはニコラスが兄を教皇まで押し上げている。復讐の為ではない。全ては国を守るためだった。
リベアが消えたことは既に国中に知れわたっていた。中には我等が枢機卿の為にと捜索活動を始める輩までいた。だがリベアが消えた跡には何一つ証拠となるものが残されておらず、やはりそんなことを出来る者など吸血鬼を置いて他にないように思われた。もし本当に吸血鬼に拐われたとすれば間もなく吸血鬼達はリベアを人質にニコラスの命を要求してくるだろうので、攻めるなら奴等が手を打つ前がいい。だが吸血鬼の住む洞窟を攻めるのは容易なことではなかった。中は暗く地形は不安定で迷路のようだし、地の利を生かされてはいくら尖鋭部隊でも太刀打ち出来ない。その中でリベアを救出するのは不可能のように思えた。ニコラスは考えあぐねていた。確信さえあれば。その晩、会議から帰り、以前より多く配置している看守達に労いの声をかけた後、空になったリベアの部屋を覗いた彼は、部屋に掛けられていた全ての十字架が逆さに変えられているのを見て吸血鬼の洞窟に攻め入ることを決意する。
同じ頃、街から帰宅したロムの腕には大量の食べ物が抱えられていた。選ばれた食材は支離滅裂だったがブブ爺はそれを見事な御馳走に変えてリベアに振る舞った。
吸血鬼達はその力を示すために満月の日を待って大衆の前にリベアを吊るすつもりでいたが、万が一奇襲を受けた時の為に策を講じることには余念がなかった。地の利はこちらにあったが向こうにも優秀な地質学者がいるらしく油断はならなかった。その上教皇軍は当然日中を狙って攻めてくるので、退路は洞窟内にトンネルを掘り別の洞窟内に繋いだものを用意しておく必要があった。そのトンネルもじきに掘り終わる。準備は整いかけていた。
吸血鬼と人間の間の戦争に儀礼など無い。教皇軍は月が満ちる前に奇襲をしかけた。軍の誰もがこの戦争で最後となることを悟っていた。静寂の中、洞窟内を忍び足で進んでいた軍隊の一人が罠に引っ掛かった音を合図に両軍は激突した。怒号が反響し、血飛沫が舞う。教皇軍は巨大なからくりを持ち込んで洞窟を壊し始めた。鍾乳洞は半壊し、両軍ともに退路を塞がれた。ロムは奇襲を受けたらリベアを届けるように上に言われていたが戦場は混乱し誰もそれどころではなかった。松明だけが灯りとなる中、戦闘は夜まで続いた。七時を指す時計を確認すると、ロムは寝かしつけていたリベアを抱き上げ、ブブ爺に背を向けたまま言った。「皆をよろしく」
剣と拳銃を手に前線に出て戦いながらリベアを探していたニコラスは、部下に命じ討ち取った吸血鬼を燃やしていたが、その炎の向こうから幼子を抱えた影が近付くのを見て立ち上がった。それと同時に影は一瞬だけ動きを止めた。炎の向こうで、ニコラスの目をしっかりと見据えていたようだった。影は大きく飛び上がりニコラス達の頭上を越えて洞窟の入り口の方に駆けていった。ニコラスは可能な限りの兵に影を逃がさぬよう指令を出し、自らも追った。もしもあれが自分の家に入り込み、リベアを拐った吸血鬼ならばその力は計り知れないだろうと悟った。
影は洞窟の入り口を塞いだ岩山を一蹴りで突き崩すとまるで軍勢を誘い出すかのようにその場に立ち止まった。満月の光を背に受けながら、再びニコラスを見据えると街の方へと跳んでいった。
ロムはニコラスが着いてくるのを確認しながら屋根の上を飛び越えていった。彼はかつての戦争以来、吸血鬼は永遠に人間に勝つことは出来ないのだと感じていた。我々は死んだ時に社会から排除されるべきだった。そこにすがり付くべきではなかったのだ。きっとこの戦争で我々は滅ぼされる。仮に吸血鬼達が生き残れたとして、リベアを差し出すことの出来ない自分に居場所は無いことは分かっていた。ならばせめて少しでも多くの兵を洞窟から誘き出し、リベアを在るべき場所に帰そう。
ニコラスの屋敷に着いたロムは、リベアの部屋の窓を開けてベッドの上にそっと下ろした。毛布をかけ、優しく髪を撫でる。頬を触れる手に暖かな体温が伝う。今は寝息さえも愛しく感じた。額を合わせ、目を閉じて聞こえぬよう静かに囁いた。「さようなら」
屋敷の周囲は既に教皇軍で取り囲まれていた。ニコラスも兵を連れて門の前に立っていた。ロムが屋敷の正面から現れると兵達が一斉に銃を構える。彼は軍隊に向かって歩みを進める。ニコラスが銃を構えると、ロムは足を止めた。ニコラスはロムを見据え、ロムもそれに返した。その目に、ニコラスはロムのすべてを悟った。
ニコラスの合図と共に、銃声が鳴り響いた。

fin.
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