いつだったか、“三人って一番面倒で疲れないか”って言われたことがあったけれど、俺はそうだとは思わない。


俺と哉太と月子は、小さい頃からずっと三人で一緒にいた。今までずっとだ。
回りからは好奇なものを見るように見られてきたけれど、それぐらいなんてことなかった。だって、それが俺達の当たり前だったから。

世間一般からしたら“3”という数字は確かに微妙な数で、脆いかもしれない。でもそれが面倒だったり、疲れたりするかと聞かれれば、答えは三人ともNOだ。
それは三人の中で暗黙の了解があったからかもしれない。何をするにもいつも三人。二人で何かしなければならない時は必ず一人が引く。そうやって俺達はこの“3”を崩さないようにしてきたのだ。

そして俺と哉太は必ず月子を優先した。それは俺と哉太の一番が月子であって、守るべき存在だったから。それは今も昔も変わらないこと。
本人は絶対気付いてないけれど、俺と哉太はいつからか月子が女の子として好きだった。お互いがそうだと気づくのは、そう時間はかからなかったと思う。

月子のことが好き。それは俺達二人にとっても月子にとっても、この関係が崩れるかもしれないことだ。だから二人とも想いは伝えない。月子が困るのもわかっていたから。
月子が一番だけれど、俺達はこの三人でいることも大切だったんだ。

だから俺は、“3”が一番安定した数字なんだと思うんだ。今までそうしてきたんだから、これからも崩さなければいい。ただそれだけのこと。
俺達二人が最も恐れている数字“2”にさえならなければいいんだ。


「すーずや、お昼休みだよ」


頭の中で悶々と考えを巡らしていたら、気づけば授業も終わって昼休みになっていた。呼びに来た月子が座ってる俺の後ろから抱き着く。


「こら、抱き着くんじゃありません」

「えー、何でよー」


本当は嬉しい。好きな女の子から抱き着かれて嬉しくない奴なんかいないと思う。
でも月子はいつも無防備過ぎる。多分俺達と育ってきたせいでもあるけれど、とにかく無防備だ。


「月子は無防備なんだよ」

「そうかなぁ?」

「そうなんだよ。なぁ、哉太?」

「そうだぞー」


そう言いながら月子の肩に両腕を乗せる哉太。俺の顔を見て笑ったってことは、仕返しのつもりか。


「哉太重いよ。それより、お腹空いたから早く食堂に行こう」

「待たせてごめんな。食堂に行こうか」


月子を真ん中にして三人で並んで歩く。このスタイルも昔から変わらない。


「それにしてもよー、おまえはほんと、色気より食い気だよな」

「哉太にだけは言われたくないよ!」

「それは言えてる」

「なっ…!錫也まで月子の味方か!」

「当たり前だよ」


いつかこの関係が崩れる日はやってくる。でもその時がやってくるまでは、こうして三人で笑い合える日が続けばいいなと願う。











◎前サイトから。羊が来る前のお話。

title:HENCE




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