※「こんにちは、世界」の番外編。友情ものです。
朝起きた時、カレンダーを見て思い出す。
「今日って、ナルトの誕生日だ」
カレンダーの10月10日のところには、大きく“俺の誕生日!”とナルトの下手くそな字とうずまき模様が書かれている。前、私の部屋に遊びに来た時に書いて帰ったんだっけ。
「プレゼントとか用意してないよ…」
どうしよう。いや、決して忘れていたわけじゃないよ。先月からプレゼントに悩んで、そのまま何も買ってなかっただけ。だって、あの子のプレゼントって、ラーメンしか思い浮かばなかったんだよ。とにかく急いでケーキを買って、ナルトの家に行こう。
「セツ、ケーキ買いに行こ」
「作らないんだな」
「うん。私が作ると、この世の物じゃないものが出来るよ」
「………」
前世の時から、ご飯類は大得意なんだけれどね。本当に何故か知らないけれど、ケーキとかは作れないんだよ。ちゃんとレシピ通りに作るのに、いつも謎の物体が出来る。不思議だ。
「無難にショートケーキでいっか。あと食材買って行こうかな」
さすがに誕生日にケーキだけとか寂しいから、ナルトの家でラーメン以外のものを作ってあげよう。近くのスーパーに寄って、カゴの中に食材を入れていく。レジでお金を払ってから、ナルトの家へと急ぐ。
「ナルトー」
ドアを叩いて名前を呼んでみるけれど、ナルトは出てこない。もしかして寝てる?もう昼前なんだけれどなあ。
「ナルト、起きて開けてよー。もう昼前だよー」
「うー、誰だってばよ…」
もう一度ドアを叩いて呼んでみれば、ドアが開いた。出て来たナルトは案の定、起きぬけの顔にパジャマ姿だった。
「おはよう、ナルト。それと、誕生日おめでとう!」
「おめでとう」
「え?は?」
「だって、今日はナルトの誕生日でしょ?」
「う、うん」
驚いて固まったままのナルトを押して、家の中に入る。相変わらず汚い部屋だなあ。このパンなんか、賞味期限が先月じゃないか。中身がなくなった牛乳パックもそのままだし、ナルトの生活が心配になった。
「よし、まずは顔を洗って着替えて来なさい」
その間に、私はテーブルの上を片付けてご飯を作りだす。セツには、テーブルの周りに落ちているゴミを捨ててもらう。顔を洗って着替えて来たナルトが、私のところに来て不思議そうに作っているものを見てきた。
「何作ってるんだってばよ?」
「オムライスとサラダ。あ、テーブルの上を拭いておいて」
「うん」
いつもラーメンばかり食べているだろうし、ってことで、オムライスとサラダというシンプルなものにした。皿に出来たオムライスとサラダを盛りつけていく。うん、我ながら上手く出来たと思う。オムライスには何て書こうかな。
「…うん、これでいいかな。はい、ナルトのはこれね」
「うおおおっ、美味そう!って、ん?何でおめでとうじゃなくて、ありがとうって書いてるんだってばよ?」
「それは、友達になってくれてありがとうってことと、生まれて来てくれてありがとうってこと」
私がナルトのオムライスに書いた言葉は、いろんな意味を込めての“ありがとう”だ。きっと、ずっと先に聞くことになるだろうけれど、ナルトに伝えたかった。ナルトは、クシナさんとミナトさんから望まれて生まれてきたんだよ、って。
「ナルト、誕生日おめでとう。って、何で泣いてるの?!」
「だ、って…そんなこと言われたの、初めてだったから、さ。……ありがとな」
「どういたしまして。ほら、食べよ?ケーキも買って来たんだよ」
「…おう!」
HAPPY BIRTHDAY ナルト
◎早めに気づいてよかった。ナルト、誕生日おめでとう!
11.10.10