今日は朝から熱っぽくて会社を休んでしまった。風邪なのかな。ご飯食べてから病院に行ってみるか。と、朝食のパンを口に入れたら吐き気がした。ふと、つい最近育児休暇を取った会社の先輩が言っていたことを思い出す。確か先輩と私と私の同僚の三人で食べに行った時、先輩が妊娠五ヶ月で、妊娠ってどんな感じなのか聞いたんだったけ。そしたら、先輩が苦笑いしながらよく微熱が出たり吐き気がしたり、大変だって言っていたんだよね。
そういえば、そろそろ来るはずのあれが先月から来ていない。…まさかそんなはずない、よね。急いで近所のドラッグストアで買ってきたやつを使ってみる。


「う、嘘……」


陽性を表すその印に、私の淡い期待は見事に打ち砕かれた。でも間違いかもしれないし、ね。病院に行って検査を受け、数分後。看護婦さんに呼ばれてもう一度部屋へ入れば、どうぞ、と先生に言われてイスに座る。検査結果を見る間の沈黙が苦しい。


「あの、検査結果は……」

「妊娠三ヶ月ですね」


そのあとのことは全然覚えていない。多分、無意識に家に帰って来たみたい。家のドアを開けて中に入れば、珍しく精市が早く帰ってきていた。


「おかえり」

「……ただいま」

「ほら、手を洗ってご飯食べよ?今日は俺がご飯作ったから」

「うん…。ありがとう」


精市は絶対に無理に聞き出そうとしない。私が話すのをいつも待ってくれる。…精市にちゃんと話さなきゃ駄目だよね。


「精市、あのね」

「うん。どうしたの?」

「その…、今日病院行ったら、…赤ちゃんが出来てたの」

「えっ?赤ちゃん?俺とお前の?」

「うん……」


精市の反応が怖くて顔を上げれない。そしたら、突然精市に苦しいぐらい強く抱きしめられる。手が緩み、精市の顔を見上げれば、いつもの優しい笑顔を浮かべていた。


「…ありがとう。あと、気づいてあげれなくてごめん。明日、一緒に病院行こう」

「え…、私、産んでもいいの…?」

「当たり前じゃないか。俺達の子供だろ?…俺が二人を幸せにするよ」

「あ、りがとう」

「ほら、泣かないの。それと、順番は逆になったけれど、俺と結婚して下さい」

「喜んで」





ポタリ、と落ちた涙が地面に染みを作った。





◎企画「彼と私は家族です。」さまに提出。




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