「ブン太!また私のお菓子食べたでしょ!」
「お前の物は、俺の物!」
「出た、ブンちゃんのジャイアニズム」
「私の物は私の物よ、馬鹿!ブン太なんか嫌いだ!」
「なっ…!嫌いって言うなよぃ」
「ブンちゃんが悪いナリ」
教室でそんな会話を繰り広げている俺達。これが俺達三人の日常であって、この教室でも見慣れた光景。もう慣れたが、周りからは羨望の眼差しや好奇の目でいつもいっぱいだった。まあ、当たり前か。
それより、ブンちゃんが鬱陶しいナリ。あ、服にお菓子のクズが付いた。
「なまえ、これをどうにかしんしゃい」
「はぁ…。ブン太、嫌いなんて冗談に決まってるでしょ。…お菓子のこともしょうがないから許してあげるわ。その変わり、今日アイスを奢りなさい」
「…!なまえ大好きだっ!」
「はいはい、私も好きよ」
「やったぜぃ!」
「なまえ、俺は?」
「雅治のことも好きよ」
なまえは他の女と違ってサバサバしている。初めて会った時から、俺達がテニス部だからって特別扱いするわけじゃなかった。だから一緒に居て安心するんだと思う。
『みょうじさん、』
「ん?何?」
『ちょっといいかな…?』
「いいよ」
俺達が話していたら、突然なまえに話し掛けて来た違うクラスの奴。最近は減ったと思っていたのにのぅ。隣のブンちゃんなんか敵対心剥き出しだ。
なまえがそいつと一緒に教室を出て行った後、いつも煩いブンちゃんは無言。ブンちゃんが静かだと気持ち悪い。
「…俺達ってなまえの何だろうな」
「友達、じゃろ」
「友達か…」
なまえは俺達のことを友達としか思ってない。“しか”って、俺達は結局なまえに何を望んでいるんだろうか。
少ししてからなまえが帰って来た。特に変わった様子はない。でも何か嬉しそうな表情をしている。まさかのぅ…。
「なんか静かね」
「なぁ。なまえは…、さっきの奴と付き合うんかよぃ…?」
「は?」
「…俺は嫌だからな!」
「俺も言っとくが、なまえがあいつと付き合うんは絶対反対じゃからな」
「なまえは俺達の物なんだからな!」
俺達が言ったことに、元から大きい目をぱちぱちとさせるなまえ。そして少しの間があったと思ったら、くすくすと笑い出した。
「ふふっ、ブン太のそのジャイアニズムは私も対象なのねー」
「え、いや、違うくはない…けどさ」
「まぁ、そういうことみたいだし?私は当分誰とも付き合わないわよ。あとね、何か誤解してるみたいだけど、さっきの人は私に図書室に新しい本を入荷したことを教えに来てくれただけよ?」
「何だよぃ…」
「俺達のはやとちりだったわけじゃな」
「そういうこと。だから、まだ二人とは一緒に居てあげるわ」
そう言って笑うなまえに安心をする俺達。
…きっと、まだこの温い関係でいいんだと思う。その時が来るまでは。
少年はそれを恋とは
知らずに走り出す
◎恋にはまだ発展しない関係を書きたかったんです。
title:Aコース