「おーい、食料持って来たよー?」


急な仕事が入って行けなくなった幼なじみの代わりに、一週間分ぐらいの食料を持って、もう一人の幼なじみに会いにこのシロガネ山にやって来たわけだけれど。


「もしかして、いない…?」


人が必死になって険しい道程を歩いて来たというのに、当の本人がいないなんて、どういうことだ。食料置いて、帰ってしまおうか。でも、ここ何ヶ月か会っていないから、顔ぐらいは見て帰りたい。あの幼なじみはチャンピオンになったと思ったら、こんな人も来ない山奥に引きこもって、家にも帰って来ない。何を考えているのか、私にはさっぱり理解出来ないよ。


「はぁ…。ん?どうしたの、ゲンガー?」

「ケケッ」

「あっち?」


相棒のゲンガーに手を引かれて洞窟の奥へと歩いて行く。薄暗い中歩いても、この子のおかげで転ばずに進める。いつも頼りになる相棒だ。


「あっ、出口」


大分奥まで歩いて来た時、光が見えた。ゲンガーが私の手を離して、外へと出ていく。慌てて追いかけ外に出てみれば、一面真っ白な景色が広がる。と、少し先によく見知った背中があった。


「こんな所にいた」

「なまえ?…何で?」

「グリーンの代わりに食料を届けに来たの。なのにレッドがいないから…」

「ごめん…」

「いいよ。それより、その格好。寒くないの?」

「平気。慣れてるから」


この雪が降ってる中に、相変わらずいつもの半袖でいるレッド。これだけ着込んでいても寒いのに…。ほんと、同じ人間なのか疑うよ。


「寒いから中に入ろう」

「ん」


レッドがいつも寝泊まりしている場所へ行く。そこには寝るための寝袋とご飯を温めたり暖を取るための薪があるだけで、何もなかった。本当に何もない。こんな所にずっといて、寂しくないのだろうか。私には堪えれない。


「ねえ、レッド」

「何?」

「…まだ、家には帰って来ないの?」

「うん…」

「そっか…」


理由とか何も言ってくれない。昔からそうだ。子供の時も、旅に出る時も、シロガネ山に行く時だってそうだった。十年以上も幼なじみしていると、そのことに慣れてしまったけれど。


「それじゃあ、レッドの顔も見れたし私は帰るね」

「…嫌だ」


帰ろうと腰を上げれば、腕を引っ張られてすっぽりと後ろからレッドに抱きしめられた。


「レッド…?」

「もう少し…、もう少しだけここにいて…」


消え入りそうな声。レッドだって、いくら手持ちのポケモン達が側にいても、やっぱり寂しいんだ。こんな所にずっと一人でいて、寂しくないわけがない。


「ね、レッド。ここに来るのは大変だけれど、また来るから。だからね、レッドもたまにでいいから私の所にも来てよ。レッドの好きなもの沢山作って待ってるから」

「…うん」

「それと!グリーンからせっかくポケギア貰ったんだから、時々電話して!分かった?」

「ん」

「じゃあ、今度こそ帰るね」


自分の首に巻いていたマフラーを取って、レッドに巻いてやる。今度来る時は、上着を持って来てあげよう。


「いくら寒くなくても、風邪ひかないようにちゃんと暖かくして寝るんだよ!」

「…ありがとう」

「どういたしまして。じゃあ、またね」




孤独を愛する寂しがり




◎過去の拍手。初レッドさん。無口…?口調が分からないです。


title:Aコース



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