目を開けると、そこは見慣れたはずの自分の部屋じゃなかった。慌てて飛び起きて窓を開けてみれば、空を飛び交うポッポの群れが見えた。そこでやっと、自分がポケモンの世界に来たことを思い出す。
「…そうだった」
夢、なんかじゃなかったんだ。…全部現実だったんだ。起きたら夢だったら良かったら、って思った私は本当に弱いなって思う。ここで生きるって決心したのにね。と、コンコンとドアを叩く音。
「…はい」
「ご飯出来たから下りて来いよ」
「うん、分かった。ありがと」
居候の身でありながら、寝坊してしまうなんて…。明日からはちゃんと起きよう。ナナミさんに貸してもらった服に着替え、洗面所に行って水で顔を洗うと一気に目が覚めた。急いでリビングに行けば、既に二人は席に着いている。
「おはようございます。寝坊してしまって、ごめんなさい…」
「気にしなくていいのよ。それより食べましょうか」
「ほら、突っ立ってないで座れよ。で、食べたらじいちゃん所に行くぞ」
「うん」
グリーンの隣に座り、用意してくれていたご飯を食べる。…そういえば、グリーンはジムリーダーなのにジムにいなくて大丈夫なのかな。私のせい、だよね。
「ねえ、グリーン」
「ん?」
「私に付き合ったりなんかして、ジムリーダーのお仕事は大丈夫…?」
「何かと思ったらそんなことかよ。ジムの方は、元から一週間休みにしていたから大丈夫だぜ」
「そっか、良かった…」
「あのなー、お前は気にし過ぎなんだよ。なあ、姉ちゃん」
「そうよ。私達は、スズちゃんのことを迷惑とか思わないわ。だからもっと頼って?」
「そうそう。って、何でまた泣いてんだよ」
「だっ、て…、嬉しく、て」
グリーンもナナミさんも優し過ぎるよ。こんな、どこから来たか分からないような私を、嫌な顔もせずに受け入れてくれる。それに、頼ってって言ってくれる。これ以上迷惑かけないように、頼らないように、って思っていたのに。
「はぁ…どうせ余計なこと考えてたんだろ。言っとくけど、俺は俺の意思でお前をここに連れてきたんだよ。嫌だったら、もっと前に見捨ててる。だからな、そんなに気を使うな。分かったか?」
「う、ん」
「よろしい。んじゃ、早く食べちまってじいちゃん所に行くぞ」
頭の上に置かれた大きな手。私の大切だったものは、あの時に全て失くなったけれど、ここでまた、大切なものが出来た。
温かくて優しい居場所
そこは、弱い私でも受け止めてくれる場所だった
◎やっと次でパートナー。