「ほら、着いたぜ」
あれからコガネシティでリニアに乗って、ヤマブキシティまで。そこからまた、ピジョットに乗ってマサラタウンまで来た。私のマサラタウンの印象は一言で言うと、静かな場所だった。今まで騒がしい都会に住んでいたせいか、マサラタウンが凄く静かに感じる。
「俺の家はここ。で、あの大きい建物がじいちゃんの研究所な。明日にでも一度じいちゃん所に行ってみるか。何かあるかもしんねぇしな」
「うん」
「あ、家には姉ちゃんがいるから心配すんな」
「えっ?何の心配…?」
「…何でもねぇよ。ほら、入んぞ」
「わ、私、まだ準備が…」
「何の準備だよ。姉ちゃん、ただいまー」
グリーンに引っ張られて家の中に入る。まだ心の準備が出来てないのに…。グリーンが声をかけると、奥からパタパタと走る音と共にグリーンに似た女の人が現れた。
「あら、おかえり。貴女がスズちゃんね!話はグリーンから聞いたわ。私は、ナナミ。これからよろしくね?」
「こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「ふふっ、妹が出来たみたいで嬉しいわ。弟なんて可愛くないもの」
「…可愛くなくて、すみませんねー」
グリーンのお姉さんのナナミさんは、凄く美人で優しい印象だった。早速ナナミさんに案内されて、これから私が使う部屋に行く。二人の両親は研究で違う地方に住んでいるらしく、この家はグリーンとナナミさんの二人しか住んでいないみたい。だから、部屋も余っていたらしい。
「ここがスズちゃんの部屋よ。日用品は、また買いに行きましょうね」
「何から何まで、すみません」
「遠慮しないで何でも言ってね?これから家族なんだから」
「…ありがとうございます」
家族、という言葉に思わず涙が出る。ナナミさんは何も言わず、私の頭を優しく撫でてくれる。こういうところ、グリーンとそっくりだな。
「下に戻って晩御飯にしましょうか。グリーンも待ちくたびれているだろうし」
「そうですね。あっ、ナナミさん、私も何か手伝います」
「それじゃあ、頼もうかしら」
ナナミさんと下のリビングに行けば、グリーンがソファーに座って何か考え事をしていた。どうかしたの?、って聞けば、トレーナーにならないか、って何の脈絡もなく聞かれる。
「トレーナー?私が?」
「おう。トレーナーになっておいた方が、色々便利だって思ってな」
「それがいいかもしれないわね」
「でも…」
「ポケモンは、明日じいちゃんの所に行ってもらえる。でも、無理になれとは言わねぇから」
「私…、トレーナーになりたい」
「ん、じゃあ明日じいちゃん所に行くか」
「うん!」
きっと、これからここで生きていくのに、私一人じゃ無理だって思ったから。
期待と少しだけの不安
どんな子と出会えるのかな