いつものように学校が終わって、いつものように帰る。何一つとして変わらない日常。良く言えば平和で、悪く言えばつまらない平凡な日々。そんな平凡な日々に対して不満はない。毎日学校行って友達と話したり、休みの日は買い物に行って自分好みの服や雑貨を買ったり、愛犬のリクと戯れたりする。そんな日々に不満なんて、ない。唯一不満があるとしたら、学校の体育の授業ぐらい。あの時間だけは本当に苦痛だ。皆は机に向かって勉強するより体育の方が楽しいって言うけれど、私はどんなにつまらない授業でも勉強する方がいい。それに、勉強は嫌いじゃない。特別好きってわけでもないけれど、自分が知らなかったことを知れるから。…あ、勉強で思い出したけれど、確か明日までに提出する課題があったんだ。家に帰ったらやらなきゃ。そんなことをふと思い出していたら、制服のポケットの中に入れていたケータイがブー、ブー、と鳴る。
「もしもし、」
『あ、スズ。あのね、今日の夕飯にカレーをしようと思っていたのに、肝心のルーを買い忘れちゃったの!お願い、帰りにルーを買って来て!』
「いいよ。じゃあスーパーに寄って、買って帰るね」
『よろしくねー』
お母さんの相変わらずの忘れように、思わず笑ってしまう。だってカレーを作るのにルーが無いなんてね。まあ、私も人のこと言えないけれど。頼まれたルーを買うために、歩いて来た道を戻る。このまま家に帰る方向に歩いて行ってもスーパーはあるけれど、あっちのスーパーの方が色々と安いんだよね。
この選択が私の日々を変えることになったんだと、あとになって気づいた。
「…ルーも買ったし、買い忘れとかないよね?」
スーパーを出てから、買い忘れがないかチェックする。よくあるんだよね。肝心の物を買わずに帰ること。それで、時間が経たないうちに二回もスーパーに行って、店員さんに苦笑いされる羽目になるんだよね。そんなこと、何度あったか。
「うん。ルーもちゃんと買ったし、丁度切らしていた物も買ったし、買い忘れはないね」
少し重くなった手荷物を持って、また来た道を歩きだす。空を見上げれば、真っ赤に染まった夕焼け空。もうすぐ冬だから、日が沈むの早くなってきたなあ。夕方になると寒くなってきたし、明日からマフラーでも着けて行こう。そう決めて、お母さんが待っている家へと急ぐ。
ぼーっと歩いていると、何かが私の目の前をふわふわと横切った。大きさからして猫?でも、明らかに空を浮いていたよね?それを目で追えば、道路を横切ろうとしていた。前を見ると、大きなトラックが走って来ている。
「あっ!」
何かを考える前に私はトラックの前に出て、その宙に浮いている子を庇うように抱きしめていた。キキーッ、と鳴るブレーキの鋭い音とクラクションの音、近くにいた人達の叫び声が聞こえた。私、死ぬのかな。…お母さん、お父さん、親不孝な娘でごめんね。
あの時、
あの選択をしなければ
私の平凡な日々は消えなかったのだろうか
◎始めましたpkmn連載。