「どこに行くの?」
「まあ着けば分かるって」
朝ご飯をいつものように三人で食べたあと、突然グリーンに準備して行くぞと外へ連れ出されて、何も分からないままピジョットに乗せられた。どこへ行くのか聞いても、さっきから教えてくれない。
「もう着いたぜ」
「着いたって、トキワ?」
ピジョットが下降して降り立った場所は、前に一度トレーナーカードを発行しに来たトキワシティだった。先に降りたグリーンに手を貸してもらい、ピジョットから降りる。ピジョットをボールに戻し、そのまま手を引かれて歩く。
「グリーン、ここって…」
「ここが俺のジムな。それと、今日からスズも働く場所になる」
「えっ、私もここで働くの…?」
「おう。家にずっといたって暇だろ?」
「そう、だけど…」
「嫌だったか?」
「ううん、違うよ。何もしない方が嫌だったから、嬉しいけれど…」
「突然来た自分が働いてもいいのか、だろ?」
「うん…」
突然来た奴が一緒に働くってなったら誰でも驚くだろう。そして、私が何よりも怖いのは、受け入れてもらえないことなんだ。たまたま拾われた場所が、何でも受け入れてくれる温かい場所だったから運が良かったけれど…。もし、受け入れてもらえなかったらって思うと、どうしても足が竦んでしまう。
「スズの隣には俺がいるんだぜ?何かあったら、いつでも助けてやる」
「グリーン…」
「だから、そんな不安そうな顔すんなって、な?」
「うん…」
「よし、じゃあ行くか」
まだこっちに来て一週間しか経ってないけれど、グリーンには何度も助けられているなあ。今だって凄く不安だったのに、グリーンの言葉だけで少し気持ちが軽くなった。本当に、この世界にきて初めて会った人がグリーンで良かった。
「…ありがとう、グリーン」
繋いだ手から伝わる
ありがとうの気持ちと優しさの気持ち
◎ほんのり甘くしたかった。