グリーンに案内されてやって来た場所。そこは、マサラタウンで一番大きな建物だった。
「ここが研究所。じいちゃんにもスズのことは話してるから」
「ありがと、グリーン」
「ん。じゃあ、ポケモンを早くもらって、今日はタマムシまで買い物に行くか」
「うん!」
研究所の中に入ると、沢山の研究員の人達がいた。皆グリーンを見ると挨拶をして、私を見れば何故かニコニコとする。グリーンに聞けば、気にすんな、って不機嫌そうに言うだけ。まあ、いいか。
「じいちゃん、連れてきたぜ」
「おおっ、グリーン!その隣の子がスズちゃんかの?」
一つの扉を開けると、あのオーキド博士がいた。ゲームの中の人じゃなくて、テレビの中の人でもない。今、現実に私の目の前にいて生きている。
「スズです。よろしくお願いします」
「わしがオーキドじゃ。早速じゃが、君のパートナーになるポケモンを見に行こうかの」
オーキド博士の第一印象は、優しそうなどこにでもいるおじいちゃんだった。でも、凄い人なんだよね。オーキド博士に案内されてやって来た部屋にはポケモンがいた。確か、あの赤いポケモンがヒトカゲで、青いポケモンがゼニガメ、緑のポケモンがフシギダネで、ゲームで最初にもらえるポケモンだったはず。それと、その三匹から少し離れた所にもう一匹ポケモンがいた。
「あの子は?」
「ああ、ブースターか。でも、あいつはなあ…」
「何かあったの?」
「トレーナーに捨てられたんだよ。そのトレーナー、俺のジムトレーナーに負けた奴でさ。負けたのはお前が弱いせいだ、って言ってそのまま捨てて行ったんだよ」
それでグリーンが保護したらしい。そんな理由で捨てるなんて酷い…。負けたのは、ポケモンだけのせいなんかじゃないはずなのに。ずっとこっちに背中を向けているブースターに、私の心は決まった。
「…ブースター、私のパートナーになってくれないかな?」
近くに行って問い掛ければ、ブースターの背中がピクッとする。でも、相変わらずこっちを向いてくれない。人に捨てられたんだもの。簡単には心を開いてくれないよね。でも、私、頑固だから。一度決めたことは、簡単に諦めれないんだ。
「同情もあるけれど…。ただ、私はブースターに私のパートナーと…私の家族になって欲しいの。それじゃ、駄目、かな…?」
この世界で一人の私と、捨てられたこの子。どこか似ているなって。それは、ただの同情だって言われたらそうだけれど、どうしても私はこの子にパートナーと、この世界の私の家族になって欲しかった。
「無理にとは言わないけれど…」
何を言っても、一度もこっちを向いてくれないブースター。やっぱり駄目かなって思っていると、ブースターが初めて私の方を向き、一声鳴いた。
「なって、くれるの…?」
そうブースターに聞けば、もう一度鳴き、私に飛びついて来た。突然のことに、中型犬より少し大きいブースターを受け止めることは出来なくて、そのまま後ろに倒れこむ。少し背中が痛かったけれど、そんなことよりも、何よりも腕の中にいる温もりが嬉しかった。
「ふふっ、よろしくね、ブースター」
どこか似ていた
寂しさを分かち合える存在が欲しかったのかもしれない
◎やっとパートナーが決まりました。