あれから数日。私とセツは、おじいちゃんが住む火影邸に住むことになった。まさか自分が火影邸に住むなんてね。始めは一人暮らしかなって覚悟を決めていたのに、おじいちゃんが女の子を一人暮らしさせるのが心配ということで、一緒に住むことになった。故郷も身寄りもなくなった私を受け入れてくれて、しかも火影邸に住まわしてくれて…。おじいちゃんには本当に感謝してもしきれないぐらいだ。


「ユキ」

「…ん?何?」

「考え事をするのはいいが、何処に向かっているんだ?」

「池がある場所だよ」


今日も朝の早いおじいちゃんと一緒に朝ご飯を食べて、私とセツは火影邸を出る。朝が早いからか、町の通りには誰も歩いていない。私は前に散歩した時に見つけた、少し町から離れた所にある池を目指す。


「池で何をするんだ?」

「チャクラコントロールの修業しようと思って。忍術を使う前にチャクラコントロールが出来た方がいいって本に書いていたから」

「それなら、最初は木を登ることから始めた方がいいだろ」

「本にもそういうステップで書いていたんだけれど、水の上を歩けたら木も登れるってことだから、先に水の上を歩くことからやった方が早いんじゃないかなあって」

「…好きにしろ」


呆れたように言うセツ。ずぼらな性格でごめんね。でも、前世からこんな性格だったから、きっと一生直らないと思うんだ。
木々の間を歩いて行くと、視界が開けて目的地に着く。私は早速池の前に立って、チャクラを足元に集中させてみる。正直チャクラのことは詳しく覚えてなかったんだけれどね。確か精神エネルギーとか何とかって言っていたし、力を抜けばいいんじゃないのかな。こういうのって感覚だよ。多分。心を落ち着かせて少し力を抜いてみれば、ブーンと足元で鳴ったのが聞こえた。わっ、本当にチャクラなんてあるんだ。


「…よしっ」


ポケットにいつも入れている巻物をセツに預け、意を決して水面に片足を乗せてみる。うん、ちゃんと足が水面に乗る。これはいけるんじゃないかなって、そのままの勢いで両足を載せたら、ジャボンと水の中に落ちた。浅い池でよかった。


「失敗だな」

「うぅ…、もう一回」


それから何度もチャクラの量を変えたりしてやってみるけれど、未だに数歩しか歩けない。多過ぎても駄目、少な過ぎても駄目。だからその間を目指すんだけれど、以外とそれが難しいんだよね。でも、もうちょっとでコツを掴めそうなんだけどなあ。そろそろ帰らないとおじいちゃんが心配しそうだ。


「今日はここまでにするのか?」

「うん。そろそろ帰らないと、おじいちゃんが心配しそうだしね」


一度も帰らず、夕方までやっていたから心配すると思うんだよね。結局お昼ご飯食べ損ねたなあ。まあ、一食ぐらい抜くことは前世でよくあったから我慢できるけれど、…このびしょびしょになった服をどうしよう。いや、帰るしかないんだけれどね。この姿のまま町を歩くって、ね…。


「どうしよう…」

「そのまま帰るしかないだろ」


分かっているけれどね、私、羞恥で死ぬと思うんだ。でも、いくら今が夏って言っても、ここまで濡れていたら今から干しても乾かないだろう。火遁で乾かすっていう手があるけれど、服が焼ける可能性が高過ぎる。まあ、私、火遁はあまり得意じゃないしね。うーん、何かいい方法ないかな。


「……あ!思いついた」

「何だ?どうせくだらないことだろ」

「くだらないって…。セツに乗って帰ったらいいんじゃないかなあ、って思っただけなのに」

「はぁ……。ほら、乗れ」

「ありがとう!セツ、大好き!」

「分かったから、早く乗れ」

「うん」


何だかんだと言うセツだけれど、いつも最後は私の我が儘を聞いてくれるんだよね。よし、今日の夕ご飯は、セツの好きなものを作ろう。



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テーマ「人外ファンタジー」
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