私が生まれ変わってから、二年が過ぎた。最近、ようやく自由に歩き回れるようになった。


「せつー、せーつー」


私が生まれた家は昔からある一族みたいで、とにかく家が広かった。この小さい体では端から端に行くのでさえ、重労働だ。それなのに私の相棒は何処に行ったんだろ。


「せつー?」

「ここだ」

「あっ、ここにいたんだ」


太陽の光で銀色に輝くその体にダイブする。私の相棒、セツは中型犬よりは少し小さいぐらいの狼みたいな犬。私が生まれてから、いつも隣にいてくれる小さな相棒。セツっていう名前は私が付けたものだ。セツの銀色の毛が雪みたいに綺麗だったのが由来。だから漢字で書くと雪。名前はもう一つあるみたいだけれど、セツが嫌だって言うから呼んだことがない。
セツは不思議なことに言葉が話せる。最初はそういう能力に目覚めちゃったのかな、とか思ったけれど、家族全員とも話せているからそうじゃないみたい。私の家ではこれが普通になってしまっているから、もう細かいことは気にしないことにした。


「せつー、いっしょにしょこについてきてー」

「…しょうがない」

「えへへ、ありがと」


ここ最近の私の日課。って言っても、ただやることがないだけなんだよね。お父さんとお母さんは任務?らしくて、大抵夜が遅い。じい様は相手してくれるけれど、やっぱり赤ちゃん扱いで少し遊んだら直ぐに寝かしつけようとするから堪ったもんじゃない。だから家の敷地内の離れにある書庫に行って本を読むのが、ここ最近の日常になっている。


「せつー、あれとって」

「わかったから爪先立ちはするな。転ぶだろ。…ほら」

「ありがと」


こうやって私が届かない本も身軽にジャンプして取ってくれるから、セツにはいつもついて来てもらっている。それと、ここの書庫はちょっと薄暗くて一人でいるのが怖いんだよね。私が本読んでいる間は、ずっと私の後ろで丸くなって背もたれ代わりになってくれる。セツはぶっきらぼうだけれど、いつも優しいんだ。


「うわー…、これもにんじゅつかあ。ここのしょこはすごいなあ」


ここの書庫には忍術とか歴史の本が沢山あった。もしかして御先祖様が忍者だったのかな。でも見る分には凄く面白い。しかも印まで書いていたりするから、覚るのが楽しかったりする。ちなみに“初心者もわかる印の組み方”という本があったから、それで印の形は覚えた。こんなの誰が出したんだろう…?売れたのかな?


「(…そういえば、忍者って言えばNARUTOを思い出すなあ)」


ふと前世で弟が読んでいたNARUTOの漫画を思い出した。確か、弟に無理矢理読まされたんだっけ。そこまで興味がなかったから細かい所までは覚えてないけれど、三代目火影とアスマ先生と自来也が殺された時は泣いたのを覚えている。あとミナトとクシナが死んだ時も悲しかったなあ。


「…ユキ、そろそろ夕餉だから戻るぞ」

「うん」


色々考えていたら夕方で、すっかり辺りは暗くなっていた。書庫には電気がないから、夕方なると真っ暗になるんだよね。電気がないってこんなに不便だったんだな。明日は蝋燭を持って来よう。そして、私は夕飯の仕度をしている匂いがする家へと向かった。



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