「凄い霧ね。前が見えない」
前も後ろも霧で先がほとんど見えない。辺りは静かで、船をこぐ音と水の流れる音しか聞こえない。
「そろそろ橋が見えてくる。その橋沿いに行くと波の国がある」
船をこぐおじさんが言って直ぐに、橋の影が見えてきた。大きいその橋はタズナさんが言ってた通り作りかけで、鉄筋とかが剥き出しの状態だった。
「…凄い」
「うひょう!でけェー!」
「コ…コラ!静かにしてくれ!」
「そうだよナルト。わざわざおじさんが手こぎでこの霧の中を船出してくれてる意味を考えなさい」
「ガトーに見つかったら大変なことになる」
タズナさんがやっと訳を話してくれたのがついさっき。その内容とはタズナさんの命がガトーとかいう男に狙われていると言うことだった。 カカシさんも知っているぐらいの世界でも有数の大金持ちみたいだけれど、裏では悪どい商売をしているらしい。大体そういう人達には裏があるよね。そのガトーがタズナさんの住む波の国の要である島の全ての海上交通や運搬を牛耳り、富を全て独占。そんなやりたい放題のところに兼ねてから建設中の橋の存在。もし、その橋が完成すれば、海上運搬や交通も重要じゃなくなり自分の富が減る。そこで橋を作っているタズナさんを殺し、橋の建設を潰そうと言う訳だ。まあそこまでは分かる。
『しかし分かりませんね…。相手は忍すら使う危険な相手。何故、それを隠して依頼されたのですか?』
『波の国は超貧しい国で、大名ですら金を持っていない。勿論ワシらにもそんな金はない!高額なBランク以上の依頼をするようなな…』
『………』
『なーに、お前らが気にすることはない。ワシが死んでも十歳になる可愛い孫が一日中泣くだけじゃ!あっ、それにワシの娘も木ノ葉の忍者を一生恨んで寂しく生きていくだけじゃ!』
『………』
『いや、なに、お前達のせいじゃない!』
『ま!…仕方ないですね。国へ帰る間だけでも護衛を続けましょう!』
あの時のタズナさんは勝った!という表情だった。事情もあれだし分かるけれどね。私達にすれば、最悪の依頼人だよ。
「もうすぐ国に着くぞ。タズナ…どうやらここまでは気付かれてないようだが、念のためマングローブのある街水道を隠れながら陸に上がるルートを通る」
「すまん」
街水道へと繋がるトンネルを抜ければ、マングローブが広がる。波の国と言うだけあって綺麗な所だった。
「オレはここまでだ。それじゃあな、気ィつけろ」
「ああ、超悪かったな。よーしィ!ワシを家まで無事送り届けてくれよ」