「どうして?」
「それは…、この試験が一人でやっても意味がないから、です。だからサスケを助けて協力しようと思ったんです」
「ふーん。じゃあさ、どうして一人でやっても意味がないって思うの?」
「だって、この試験は“任務”でしょう?イコール、チームでやれって意味じゃないかと。元より上忍相手に下忍成り立ての私達が一人でかかって行っても、敵うわけがないです」
カカシさんは、何度もこのサバイバル演習は“任務”だと言っていた。任務は最低でも二人一組でやる。と言うことは、チームを組んだ時にチームで協力して任務がこなせるかが重要なんじゃないかって思った。
「…さすがだね。もう一つ聞くけど、スズが三つしかないのはどうしてだと思う?」
「仲間割れ、ですか?」
「うん。それで?」
「私の考えですが…、スズが三つしかないという状況下でも、チームで協力出来るのかを見たかったのかな、と」
「うん、ユキは合格だよ。火影様のお墨付きなだけあるね」
…おじいちゃんが何言っていようと、もう私は気にしないことに決めた。言っても意味がないっていうことに最近気づいたから。
「でも、オレとは戦ってもらうよ」
「やっぱりですか…。カカシさんと戦うのは嫌だなあ」
「オレもなんだけれどね、この試験は実力も一応見なきゃいけないから」
「…わかりました。でも、その前に移動しませんか?」
「いいよ」
木から飛び降り、開けた場所を探す。移動中、後ろにいるカカシさんに気をつけながら歩いていたけれど、一度も攻撃をして来なかった。良かった…。冷静に言ったけれど、内心は心臓が飛び出そうなぐらい緊張していたんだよね。
「この辺でいいんじゃない?」
「…そうですね」
「じゃ、始めようか」
カカシさんと向き合う形になる。そっちからどうぞ、と言うカカシさんの言葉に甘え、私はホルスターからクナイを取り出し、地面を蹴ってカカシさんに向かって行く。キン、とクナイが交わる音が響いた。
「…そういえば言うの忘れてたけれど、その服似合ってるね」
「え…、あ、ありがとう、ございます」
「顔真っ赤だよー。もしかして、ユキって直球な言葉に弱い?」
「わ、悪いですか!?言われ慣れてないんですよ!」
「悪くないよ。ただ、可愛いなあって思っただけ」
戦っている最中だっていうのに、可愛いと笑顔で連呼するカカシさん。何の羞恥プレイなんだ。前世では彼氏いない歴イコール歳の数だから、お世辞でもそういう言葉を男の人から言われたことがなかった。
「…お世辞、ありがとうございます」
「いやいや、本当のことだから。オレが嘘言うわけないでしょ」
「私は可愛くないです、よ!」
クナイを持ったまま蹴りを入れてみるけれど、難無く受け止められる。じゃあ、と空いているもう片方の足で蹴れば、それも受け止められた。
「おっと。あのさ、前から思ってたけれど、ユキって鈍感だよね」
「鈍感?」
「うん。超がつくほどの鈍感」
「むっ」
超がつくほどって…。何か馬鹿にされたみたい。宙吊り状態になっている私は、持っていたクナイをカカシさんに向けて投げる。それを避けるために、私の足は解放される。私は地面に着地したと同時に飛んで、右手にチャクラを集中させた。そしてカカシさんの上から拳を落とせば、ドオオオンという大きな音と土煙が舞った。
「あっ、避けられちゃいましたか」
「ふぅ…。今のかわさなかったら危なかったよ。それ、桜花衝でしょ?」
「これにそんな名前があったんですか」
「そうだよ。ユキはこれをどこで習ったの?」
「自分でですよ」
「いやー、そのチャクラコントロールは下忍以上だね。それに思考も体術もだし」
まあ、元から色々と知識がありましたからね。ただ、これを習得するのは結構時間がかかった。意外と難しいんだよね。水の上を歩いたり木に登ったりすることが出来ても、この一カ所にチャクラを一気に溜めることは、簡単そうで案外難しかった。何年後かのサクラも沢山修行したんだろうなあ。
「本当は忍術も確かめたいところなんだけれど…、もう時間だな」
カカシさんの言葉と同時に、セットしていたタイマー時計が鳴った。