サスケに連れられて来たのは、やっぱり漫画で何度か見たことがあるあの演習場だった。
「ここでいつも修業するんだ」
「そうなんだ」
森の中の演習場には、あちこちに的があってどれもクナイや手裏剣で傷だらけだった。サスケは早速手裏剣を出して、目の前にある的に放つ。カッ、と鳴って手裏剣が的に刺さる。
「…いつも真ん中に刺さんないんだよな」
「もう少し肩の力を抜いてみたらどう?」
「こうか…?」
「うん」
構え直してもう一度試すと、次はさっきよりも真ん中に近いところに刺さった。サスケは言ったことを一回で出来るからすごい。
「出来た…!ありがとな、ユキ」
「ふふっ、どういたしまして。真ん中まであと少しだね」
「ああ」
しばらくサスケが手裏剣を投げる姿を見ていると、後ろに気配がする。ここに来る人ってことはあの人しかいない。振り返ると、そこには私の予想通り任務帰りの格好をしたイタチさんがいた。
「あっ、兄さん!お帰り!」
「ただいま。修業か」
「うん」
「偉いな。それで、その子はサスケの友達か?それとも彼女…」
「ち、違うよ!」
「えっ、違うの?私、サスケと友達になれたと思っていたのになあ…」
「そうじゃなくって!ユキはその…友達、だ!って、何でユキは笑うんだよ」
「あははっ、ごめんね。サスケの焦った顔が面白くて。ありがとう」
「さっきのは嘘かよ」
サスケの焦った顔が何か新鮮で面白くて、思わずイタチさんの悪ノリに乗ってしまった。イタチさんは笑って、拗ねているサスケの頭を撫でている。私と目が合うと、ニッコリと笑う。
「改めて、はじめまして。サスケの友達の氷野ユキです」
「オレはサスケの兄のイタチだ。君のことは聞いている」
「…おじいちゃんですか」
「ああ」
またおじいちゃん、貴方ですか。前に注意したのになあ。可愛がられていることは嬉しいけれど、ここまで知られていると恐怖すら覚えるよ。
「兄さん、見てて!前より真ん中に刺さるようになったんだ」
「見ているからやってみろ」
イタチさんが見ていることに張り切って手裏剣を構えるサスケ。今のサスケは年相応な感じだよね。アカデミーにいる時も、もっと子供らしくしていたらいいのに。カッカッ、と手裏剣が刺さる音に的を見れば、投げた中の一つが真ん中に刺さっていた。
「前より上手くなったな」
「だろ!ユキにコツを教えてもらったんだ」
「そうか。良かったな」
「へへっ、もう一度投げるから見ててよ!」
また構えて手裏剣を投げていく。コツを掴むのが早いなあ。投げる度に上手くなってるもの。すぐに出来るサスケが羨ましい。
「ユキ」
「何ですか?」
「これからもサスケと仲良くしてやって欲しい。それと、時々でいいから気にかけてやってはくれないか?」
「それは勿論ですが…、イタチさんがこれからいなくなるみたいな頼み方ですね」
「……火影様の言う通り、ユキは聡いな」
「え、」
「何でもない。ほら、サスケが呼んでるぞ」
意味深な言葉と困ったように笑うイタチさんの顔に、あの事を避けることが出来ないんだって思った。この人はどこまでも里のこととサスケのことを考えている優しい人だから、きっと止めても無駄なんだろう。そうじゃなかったら、私にこんなことは言わないはずだ。
「イタチさん、体には気をつけて下さいね」
「…ありがとう。今日、最後にユキと出会えて良かった。…サスケをよろしく頼む」
「はい。…いってらっしゃい、イタチさん」
その日の夜、サスケただ一人を残してうちは一族は滅亡した。