「今日から私もアカデミー生か」
入学式やクラス発表なども終わって帰ろうとしたら、アカデミーの前にはお母さんとお父さんに手を繋がれて嬉しそうにはしゃぐ子供で溢れていた。ああいう光景を見ると、いくら精神年齢が二十歳でもやっぱり寂しいなって思う。
「ユキ、」
「ん?何か言った?」
「…帰ったら火影が待っている」
「そう、だよね…。うん、私にはおじいちゃんが待っているもんね。ありがと、セツ」
そうだ。私には、ちゃんと家で待ってくれている人がいる。それにセツがいつも隣にいてくれる。それを考えると、ナルトには誰もいないんだよね…。
「ナルトは何処だろ?」
「あそこにいる」
「あっ、ほんとだ」
セツの見る方向を見れば、木の下にあるブランコに座って俯いているナルトがいた。声をかけようとしたら、数人の子供に囲まれて林の中に連れて行かれた。もしかしてリンチじゃないよね?抱っこしていたセツを下ろして、走ってナルト達を追う。声がする方に走って行けば、私の予想は当たっていたみたいで、ナルトは数人の子供達に囲まれて殴られていた。
「君達、ナルトに何してるのかな?」
「ユキ…」
「お前、誰だよ?」
「誰って、ナルトの友達ですけど」
「こいつの友達?はっ、ありえねェし!お前、馬鹿なんじゃねェの?こいつ、里の皆から嫌われてるんだぜ?」
「は?それが何ですか?私が友達だって言ったら友達なんですよ。貴方達の方が馬鹿じゃないんですか?ちゃんと耳は付いてますか?」
そう言えば、顔を真っ赤にして私に殴りかかって来る男の子。最近の子はすぐに逆ギレするんだから。殴りかかってきたその拳を受け止めて、そのまま背負い投げをする。それを見ていた他の子達は顔を真っ青にし、お前の親に言い付けてやるとか何とか言って、倒れた子もそのままにして一斉に逃げて行った。
「ナルト、大丈夫?」
「これぐらい平気だってばよ。それより…、ユキの親に言い付けるって、あいつら……」
「ああ、それは気にしないで大丈夫だよ。私、親いないから」
「えっ…。ユキってば、親いねェの…?」
「うん」
「…何でだってばよ?」
「私の一族、私とセツ以外は皆殺されたの」
私がそう言うと、すごく驚いた顔をするナルト。子供にこういう話しは聞かさない方がいいのかもしれないけれど、ナルトなら大丈夫って思ったから話した。と、しばらく無言だったナルトが、突然私の肩を掴んできた。
「ど、どうしたの?」
「…オレはずっとユキの友達だってばよ!一人じゃねェからな!」
「うん、ありがとう。ナルトも一人じゃないからね」
「へへっ、ありがとな!」
男女の間で親友なんて有り得ないってよく言うし、私もそう思ってたけれど。ナルトとなら、って思えたんだ。