木ノ葉の里に住み始めて一年半が過ぎた。春になったら、私はアカデミーに通う。
あれから水面歩行も木に登ることも完璧に出来るようになった。最近は、おじいちゃんに頼んで忍術や体術を教えてもらっている。…火遁と土遁は無理だったけれど。時々、口寄せの猿魔が体術を教えてくれることもあって、今では体術は私の十八番だ。忍術も印を覚えていたからコントロールの練習だけ。コントロールだけって言っても、まだチャクラの量が足りなくて出来ない術が多い。まだ時間があるから忍術の方は焦らなくて大丈夫だと思うけれど、幻術の方が、ね。紅さんがたまに教えてくれることがあるんだけれど、どうやら私は幻術の方は得意じゃないみたい。紅さんのおかげで、どうにか幻術を解くことは出来るようになったけれど、幻術を使った実践は難しそうだ。
「幻術って難しいね」
「なんだ、突然」
「いや、ふとそう思っただけだよ」
「お前は忍術と体術が得意だから大丈夫だと思うが」
「うん。ただ、オールマイティに出来たらよかったなあって」
「まあ、まだこれからなんだから焦ることはないだろう」
「そうだね。…よしっ、もうちょっと修業するかな」
座っていた腰を上げて、今練習中の風遁の術の印を結ぼうとした瞬間、草むらがガサガサと音をたてる。振り向けば、そこから出てきたのは黄色い髪の男の子。黄色い髪の男の子…って、ナルトだ!驚いているナルトをもう一度よく見れば、何故か体中が傷だらけで服もボロボロ。…里の大人達か。
「君、こっちにおいでよ。その傷治してあげる」
「えっ…、」
「ほら、早くおいで」
警戒しているのか、呼んでも地面を見たままナルトは動かない。もー、しょうがないなあ。ナルトの所まで歩いて行き、手首を掴んで連れて来て無理矢理切り株の上に座らせる。私がとった行動にポカーンと口をあけたままのナルトは放っておき、傷口に手をかざして最近本を読んで使えるようになった医療忍術で治していく。
「はい、治ったよ」
「…お前ってば、オレのこと嫌いじゃねェの?」
「何で嫌いになるの?」
「里の皆は、オレのこと化け物だって嫌うから…」
「化け物?どうして?君は人間でしょう?」
「………」
そう言えば、黙り込むナルト。既に、私が治療していない軽い擦り傷は九尾の力で跡形もなく治っている。確かにナルトは九尾が入った人柱力だけれど、ナルトはナルトだ。化け物でも何者でもない。
「ねぇ、君の名前は?」
「…ナルト、…うずまきナルトだってばよ」
「あのね、ナルトはナルトだと思うよ。化け物なんかじゃない。それは私が保障する」
「オレは、オレ…?」
「うん。あ、私は氷野ユキっていうの。こっちは相棒のセツ。ねっ、ナルト。私と友達になってくれない?」
これが、私とナルトが初めて出会った日。