これからは、ふたりでいきていくんだと。
ずっと、そうおもってた。



おれたちのおとーさんとおかーさんは、せけん?で言うところのやさしい人、らしい。
けれど、そんなおとーさんは、お酒をのんだり、機嫌が悪いと、すぐにおれたちをなぐってきます。
おかーさんはそのたびに、おれたちを守ってくれます。
守ってくれるけれど、かばいきれなくて、おれたちもおかーさんもぼろぼろです。
それでも、お酒を飲まなかったり、機嫌がよかったりすると、おとーさんはにこにことおれたちに接してきます。
家族旅行だったり、おでかけだったり連れて行ってくれます。
おこったおとーさんはこわいけれど、にこにこしているおとーさんは好きです。
おとーさんがにこにこしていると、おかーさんもにこにこします。
痛いことばっかりだったけど、それでも、しあわせでした。

けれど、それもすぐに終わってしまいました。


とある土砂降りの深夜、おかーさんはおばあちゃんの具合?が悪くなったといって、お見舞いにいっていました。
おばあちゃんのおうちは遠くて、帰ってくるのにとても時間がかかります。
その日はおとーさんのほうが先に帰ってきていて、おれたちにごはんを作ってくれました。
そこで、電話がなり、おとーさんは少しこわい顔をしました。
おとーさんはけいたいをポケットにしまい、おれたちの頭をなでて、
「今からお母さんを迎えに行ってくる。いい子でお留守番しているんだぞ?」
と、笑って言いました。
おれたちはそれに元気よく返事をして、お皿を流し台に置いて、お風呂にはいりました。
それから、おとーさんに、笑顔で「いってらっしゃい」と声をかけました。
あの時に、笑ってくれたおとーさんの顔が、今でも思い出せます。


土砂降りの、深夜。
おとーさんとおかーさんは、二度とおうちに帰ってきませんでした。




おばあちゃんのいる病院から帰るとちゅうに、止まりきれなかったトラックがつっこんできて、ふたりともしんでしまったそうで。
何もわからない状態で、おじさんたちがおれたちに黒い服を着るようにうながし、手をつないでいきました。
そこには、なにもいわない、おとーさんとおかーさんがいました。
まっしろな顔で、ねむっているおとーさんとおかーさん。
からだを見たいと思ったけれど、やめておきなさい、っておこられて。

「おとーさんとおかーさん、こんなとこじゃさむいよ」
「おじさん、おとーさんとおかーさんおこしてよ」

おれたちは、おじさんにすがって泣きました。
おじさんは、おれたちを抱きしめて、ただ泣いていました。

ゆっくりとおとーさんとおかーさんのいる箱が動かされて、どこかに連れていかれて。
手をひかれてついていけば、おとーさんとおかーさんを燃やすと言われて。
ただ、ふたりで泣きながら、やめてと言っていたことは憶えていて。

次に目がさめたときは、おとーさんとおかーさんはいなくて、ただ、四角いちいさな箱がふたつ置かれていました。



それからしばらくたち、しんせき中をたらいまわしにされ、さいしゅうてきにいれられた孤児院。
そこの人たちは、やさしいから、ってしんせきのおじさんが言っていて。
けれど、じっさい見てみると、そんなことはなくて。

ふたごはでていけとか、
きらわれてるくせにだとか、
おまえたちが物をとったんだろ、だとか。

してもいないことばかり言われて、園長先生もそれに同意して。
叱られるのはいつもおれたちで。
何もしてないと言ったら、うそをつくんだね、と叩かれて。
これじゃあ、昔となにもかわらない。
それどころか、おとーさんとおかーさんがいた時の方がよくて。
何度も布団にくるまって泣いたけれど、泣いても何も変わらなくて。

だからこそ、こんな地獄から、逃げ出したかった。


***

深夜、周りのこどもたちも園長先生も眠る時間。
おれたちは、昔おとーさんに買ってもらった、大きな鞄を取り出す。
こっそりそれと毛布をもちだして、キッチンへ向かう。
パンだったり、野菜だったり、とにかく詰められるだけ鞄につめこんで。
もちきれない分は、毛布にくるんで。
どこの窓が深夜でも開けられるか、開けてもばれないかは前もって見つけておいた。
あとは、にげるだけだ。

「ふたりだけでいきていこう」
「だれのてもかりるもんか」

ぎゅ、と手をにぎって。
靴を片手に、窓から飛び出した。

なにもかんがえず、ただ走った。
夜の道はこわかったけれど、それでも。
ふたりでなら、いきていけるって思ってたんだ。






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