*ネクロネタ
*木吉がネクロフィリア
*女体化あり
























「屍体は美しい」
「愛するに値するものだ」

と言っていた友人に、どうやら恋人?ができたらしい。
本当に生きている人間かどうかはわからない。
あいつのことだから屍体かもしれないが、一応生きている人間だそうで。
とりあえず逢わせてくれるということなので、菓子折でも持って木吉の家に向かってみた。
相変わらず薄暗い家だ。

怪しい道具が大量に並んだ倉庫を通り、通用口へ向かう。
正門から入ってもいいがなにせ正門から玄関まで行くのにやたら時間がかかる。

(…この家の設計どうなってんだ)

などと考えていたらバケツを蹴ってしまったようで、中から血のついたメスがでてきた。

「まじでなにしてんだこいつ…」

などとぼやきながらも、ようやく通用口に到着し、ノックだけして入室する。
此処まで来たらやっと明るくなった。
倉庫ももっと明るくすべきだと思うが、そうはいかないようで。
ゆっくりと歩いていき、来客用の部屋へ足を運ぶ。
此処からがまた遠い。
正門から入ればよかったのかもしれないが、あそこはあそこで危険なのだ。
来客用の部屋に到着するまでに何個も怪しいものをみたが、それはまあ察してくれとしか言えないものばかりだった。
来客用の部屋の扉にも言いにくいものがぶらさがっていて、ものすごく引き返したかった。
だがしかし、ようやく此処まで来たのだから会わないで帰るというのも味気がないだろう。
そう考え、なんとかノックをする。

「おい、来たぞ」

そう言いながら扉をあけると、ポットを片手に微笑む木吉がいて。

「日向!よく来たなー大変だっただろ?」
「ほんとだよ設計おかしいぞこの家」
「はは、広いもんな」
「無駄にな」

ソファに腰をかけ、出された紅茶を飲む。
ふんわりといい香りが漂ってくる。

「これ何の茶?」
「んー?なんだったかな」
「ああ?」
「んーと、ああ、アップルだ」

珍しい。
こいつがそういう紅茶を出してくるなんて。
普段ならコーヒーかストレートティーで、時々カフェオレかミルクティーといった牛乳を入れたものが出てくるぐらいで。

「なんだ、恋人の趣味か?」
「まあ、そんなところかな」

笑いながら頬をかくしぐさに少しイラっとした。
しかし此処でキレるわけにはいかない。
なにせ、初めて木吉が生きている人間に惚れたのだから。

「で、肝心の彼女さんは?俺その人に逢いにきたんだけど」
「惚れるなよ?」
「馬鹿言うな俺に人のもんとる趣味はねえ。それにリコがいる」
「そうだったな!リコは元気か?」
「すっげー元気だよ。元気すぎるくらいだ。…ネクロフィリアのお前が惚れるくらいだ、相当美しいんだろ?」

なんて少し嫌みを交えて言ってみれば、満面の笑みを浮かべて。

「もちろん。最高の女性だ」

木吉がそこまでいうくらいだ、相当だろうと楽しみにしていた。
の、だが。
木吉に抱えられて部屋に来た女性は、女性というより、少女という言葉が当てはまる子どもだった。

「…え?」
「紹介するよ日向。俺が初めて愛した人間だ」 
「…こんにちは」

木吉に抱きかかえられた少女は、そう言って木吉の服を握りしめた。

「かわいいだろー?もうほんとかわいすぎて手放せなくてなー」

なんてその少女を抱きしめながら、笑って木吉は言った。
抱きかかえられた少女は木吉の服から手を離さず、こちらをジッとみていた。

「…お前、ロリコン?」
「…違うぞ」

即答されたがその姿ではまったく説得力がない。

「どこで知り合ったんだ?」
「あそこの屍体処理場で」

また随分とすごい知り合い方をしたなこいつ。
眉間にしわが寄るのも気にせずに、質問を重ねる。

「…名前は?」
「ああ、そういや言ってなかったな!ほら、挨拶しな」

木吉に促され、口を開く少女。
その手は木吉の服を握ったままだった。

「はじめまして、はなみやまことです。よろしくおねがいします、ひゅうがさん」

この言葉を聴いた瞬間に、身体に悪寒が走った。
少女が俺の名前を知っていたのだ。
木吉が事前に教えたのかと思ったが、木吉の反応を見る限りそうではないらしい。
何故知っている?
聞こうにも聞けなかった。

「あー…えっとな日向、厳密に言うとこの子人間じゃなくてな…まあその」

やたらめったら言葉を濁す木吉にいらいらが募る。
それと、少しひっかかった。
【人間ではない】とは、どういう意味なのだろうか。


「その…魔女、なんだ」


「…は?」

唯一でた声がそれだった。
この目の前にいる少女が、魔女。
先日魔女狩りが行われ、全員虐殺され、魔女の血族はもう滅びたと言われていたのに。
それでもこの少女は魔女だという。

どうやら詳しく聞いてみると、血族ではあるが血はとても薄く、魔術もなにも使えない状態だったそうで、人里に預けられたらしい。
しかし運が悪く、たまたま里帰りした日に魔女狩りにあってしまい、死に際の魔女に手を掴まれてしまったらしい。

死に際の魔女の手を握ると、魔力が得られる。

なんて想像上の出来事だと思っていたが、どうやらこの話は嘘ではなかったようだ。
実際に、目の前の少女―――名を花宮といったか、その子は魔女により、まったく力をもたぬ状態から力を得てしまった。

「…まるで小説の話だな」
「まあな。でも現実なんだ」

木吉は花宮を抱きしめ、こちらに向かって笑う。
花宮は木吉に抱きかかえられたまま、一切動かなかった。

色々言いたいことはあるが、とりあえずひとこと。


「お前の性癖難有りすぎだろ!!!」



***




日向が帰ったあと、花宮はけらけらと、とても楽しそうに笑っていた。

「笑ってやるなよ、普通の人間はそうだって」

と言ってなだめてみても、まったく聞く耳持たずのようで。
足を組んでソファに座るこの女性が、先ほどまで少女であったことなど誰が信じるものか。

「お前まったく反応しなかったどころか、俺の姿みた瞬間結婚してください、だもんな」
「屍体以上に愛せると思った女性はお前ひとりだからな」
「ふはっ、よく言うぜ。屍体の方がいいくせによ」
「俺はあまり他人を近くに置きたくないんだ。でもお前は必ず傍においている。その意味くらい分かるだろう?」

そう言うと笑顔を深め、まるで人を見下したような表情をする。
そんな花宮すら愛しいと思うのだから、相当末期なのだろう。

「ネクロフィリアでロリコンとは、救えねえな」
「救われなくて結構。花宮がいて屍体があればそれでいいさ」
「狂ってるね、木吉」
「お前もな、花宮」

花宮が腰をおろしているソファに近寄る。
そうすると花宮は木吉の首に手をまわし、身体をひっつけてくる。

「屍体よりも愛してくれよ?ダーリン」
「勿論だよ、ハニー」

花宮の身体を抱きかかえ、来客用の部屋から出る。

「愛してやるよ、たーっぷりな」
「ふはっ、盛ってんじゃねえよ」
「あおったのは真だぞ?」
「ばっかじゃねえの」

けらけらと楽しそうに笑う花宮につられて、木吉も笑う。
そのまま長い廊下を歩き、ゆっくりと重たい扉を閉めた。




棺の中のしあわせ
(ちっぽけな棺が僕の世界)




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