*♀化のような違うような


バケツをひっくり返したような雨。
最初はぽつぽつとゆっくり降っていたのだが、時間が経つにつれだんだんとその雨音は大きくなっていった。

部活が休みだったため、たまにはと思い図書館へ来たのが間違いだったな。

ふう、と小さくため息をつき、鞄から折りたたみ傘を取り出す。
綺麗な緑色をした傘。

似合うと思ったんだ、もらって?

そういって笑って差し出してきたあいつを思い出す。
あいつはよくモノをくれる。
それは食べ物であったり、実用品であったり、想いであったり。
それに答えられないのに、それでもいいから、と渡してくる。

答えたい、そう思ったことは何度もある。
なのに、今の関係がかわるのが怖くて答えられない自分がいる。
嗚呼なんて愚かなのだろう。

いつからこんなにも弱くなったのか。

雨はまだやまない。
むしろ更に強くなったような気がする。

傘をなでる。
綺麗な緑色はきらきらと輝いて。
何故か汚したくなくて。

この雨だ、傘をさしても濡れるだろう。

携帯電話と財布、文庫本をタオルでくるみ、底のほうへしまいこむ。
教科書はファイルの下に重ねる。

多少濡れても使えるだろう。
コンビニかどこかでビニール傘を買えばいい。

そう思い、鞄を抱えて歩き出す。
走る気になれなかった。
雨に濡れたい気分、なんて、昔の自分や仲間が知ったら笑うようなことを、今している。
変な気持ちだった。
空模様と同じ、心が曇り、雨が降っているようだった。



ある程度歩いたとき、いきなり雨がやんだ。
上をみると、そこにはビニールがあった。
ビニール傘。

「風邪ひいちゃうよ、真ちゃん」

「・・・高尾」

振り向くと、とても心配そうな高尾の姿。

「真ちゃん、傘は?持ってなかった?」
「・・・持っていたが、使う気になれなかったのだよ」
「なんで」

信じられない、と言いたげな声。
自分でも信じられない。
しかし理由はわかっている。

「・・・この傘は、お前がくれたものだから」

だからきっと、大事にしたいんだ。

鞄を抱く腕に力がこもる。
高尾の顔が見たくなくて、俯いた。
ずぶ濡れでびしゃびしゃの靴が目にはいる。

いきなり、頭にあたたかいものが触れた。
このにおいは、知っている。
高尾の、におい。

「大事にしてくれるのは嬉しいけど、それで真ちゃんが濡れるのは嫌だ。・・・風邪ひいたらどうすんの」
「・・・すぐ帰るから、平気なのだよ」
「嘘だろ。・・・俺んちいこ、身体あっためて、雨がやんだら送るから」

嗚呼、また。

「・・・そこまでしなくてもいいのだよ」
「俺がしたいからしてるの」
「他にもいるだろう」

なんて不毛な、愚かな、恋。
高尾が好き。
でも、怖い。
信じたいのに信じられない。
泣きそうな顔をタオルで隠そうとした。
しかし、それは叶わなかった。

「真ちゃんが好きだからに決まってるだろ。俺は真ちゃんがいたらいい。真ちゃんだからここまでしてるんだ」

「・・・そんなもの、空想だ」
「空想でもいいよ。時間かかるけど信じさせるから」
それに、真ちゃんも俺のこと好きだろ。


思わず涙がこぼれた。

今なら言える気がする。

いや、言うんだ。

「・・・高尾、」

すき。



長い永いこの道を
(君と進みたいと思ったのです)



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