マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ マリオネット

「千星くん起きて! 大変なんだっ!!」
「……ん」
「ねぇ起きてってば!」
「つな……ボリューム下げて」
「そんな事言ってる場合じゃないんだよ! リボーンとビアンキが結婚するみたいなんだ」

 ああ、どうやらまだ夢の中にいるようだ。幻聴が聞こえる。目元に腕を持っていきもう一度入眠しようとしたが、ツナが本当なんだと慌てて付け足し、一枚のカードを突き出した。
 寝ることを諦めてそれに目を通す。そこには結婚招待状と書いてあり、しっかりとリボーンとビアンキの名前が載っていた。

「リボーンは一歳児だろ。法律上無理なんじゃない?」
「この二人ならやりかねないよ……。下にいる京子ちゃんとハルちゃんも招待状もらったみたいだし」
「え」
「式場に一緒に行こうって迎えに来たんだ」

 二人はわざわざツナを迎えに来てくれたのか。ツナも隅に置けないなと現実逃避じみたことを考える。
 ちなみに、おれは結婚式に着ていく服なんて一着も持っていない。キャリーケースの中を漁っても出てくるわけがない。入れた覚えがないのだから。
 とにかく着るものがないので、ツナと二人には先に行ってもらう事にした。おれは携帯に手をかけ、密かに交換を済ませた番号に連絡を入れる。

「──あ、もしもし。ディーノさんですか?」



 式場に遅れて到着する。もう始まっているかも知れないと思いながら会場の扉を開く。
 そこには銃器を両手にした、ご乱心の花嫁の姿があった。

「リボーンはどこ!? 誰が隠したの!」
「な、何言っんだビアンキ。いくらこいつでも結婚だぞ。緊張くれーするって!」

 そんな彼女に冷や汗を垂らしながら対応をするディーノさん。一体何があったのだろうか。考えても仕方なく、お色直しに入ったのを見計らって理由を聞くことにした。
 リボーンとディーノさん、ツナに続き控え室に入っていくと、その他にもう一つの人影がある。

「あ、獄寺」
「げ、お前も来てたのかよ」
「まあね」
「お、千星! 似合ってんじゃん」
「ありがとうございます。あと急に無理言ってすみません」
「はは! こんくらいどーって事ねぇよ。オレの部下ので悪いがな」

 ディーノさんはおれの姿をみて満足そうに笑う。現在おれは、ディーノさんの部下の方から借りた礼服に身を包んでいた。もちろん、男物だ。外国人にしてはかなり小柄な名も知らない部下の方に感謝の気持ちを送る。
 おれは目の前のソファに座る、リボーン……の機械人形に目を向けた。よくできているので遠目では全くわからなかった。大方ビアンキが一方的に挙式を上げたので逃げて、ディーノさんあたりがその場しのぎの偽物を用意したのだろう。

「リボーンも良い弟子を持って幸せですね」
「そう言われると微妙な気分になるぜ」
「でももう少し責任を持つべきだよね。今までも勘違いさせるような行動や言動してたわけだし。本心かも知れないけど、踊らされているビアンキが可哀想だ」

 まあ、彼女は思い込みが激しいところがあるけど。
 そう言うとその場にいる全員が驚きの表情を浮かべた。おれの考えって間違ってるのか?

「どうしたの?」
「いや、そういう考えもあるんだなって思って」
「しかし、ビアンキが大人しく座ってる姿は可愛かったんだろうなぁ。ホント見たかった」
「千星くんは初めいなかったもんね」
「毒サソリはは黙ってれば絵になるんだがな……」

 そう言ってうーんと唸るディーノさん。確かにその意見には賛成だ。彼女はスタイル良いので、どんな種類のでも着こなせる。純白というイメージは普段の印象からだとあまりないけれど、純白のドレスはとてもよく似合っていた。

「花嫁、ね」
「なんか言ったか?」
「なんでもないよ」

 ウエディングドレスか。あの事故さえなかったら、おれも純白のそれを着ることになっていたのかもしれない。
 脳裏をよぎったそれを、否定するように軽く首を振った。そんな話は遠い彼方に吹き飛ばそう。虚しくなるだけだ。
 その後ディーノさんとツナによる、偽リボーンの人形劇をしばらく傍観することになった。



20090206

/

[ 戻る ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -