マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ デート?



 天気は晴天、行楽日和。初春の陽光が冬の残った冷気を温めている。とても過ごしやすい日だ。
 そんな優しい日和におれへの嫌がらせが今日も行われた。つまり、叩き起こされたのだ。最近多くてすごく困る。叩き起こした本人は「動物園に行くぞ」とだけ言い、さっさとどこかへ行ってしまった。一体何だったんだろう。

「十代目はもう着いたのか?」
「多分ね。今頃楽しく京子ちゃんとデートしてるんじゃないかな。二人っきりで行ったってリボーン言ってたし」
「へぇ……」
「武はランボさんとハルちゃんとイーちゃんと一緒だって」
「けっ、あいつ等もいんのかよ」

 歩きながら他愛のない話を交わす。ビアンキもいることは言わない方が吉だろう。
 おれは現在、獄寺少年と共に動物園に来ていた。
 前回のトラブルの後から、会話が少しだけ続くようになってきた気がする。もしかしたら獄寺は、溜まっていた怒りを本人に吐き出せてスッキリしたのかもしれない。

「おれ動物園初めてかも」
「マジかよ」
「獄寺は?」
「一応あっけど……」
「一応ってなんだよ」
「ガキん頃だったから」
「そっか」
「しっかし何でオレはお前とペアなんだ? 今頃十代目はオレを必要としているはずなのに……!」
「理由はリボーンのみが知るってやつかな。考えるだけ無駄──あ! 向こうにペンギンいるって」
「ちょっ! 勝手に行くな!」

 おれは案内に従ってペンギンを見るべく足を進める。後ろからは文句を言いながらもちゃんとついてくる獄寺少年。

「うわぁ。泳いでるよ」
「当たり前だ」
「可愛いなー。あ、ちびっ子発見」
「……何が楽しいのか全然理解できねぇ」
「そう? 楽しいじゃん」
「ガキか」
「はは、たまに言われる」
「そろそろ行くぞ!」
「えー」
「えーじゃない! リボーンさんから頂いた重要な任務を忘れたとか言わせねーぞ!」
「重要な任務?」
「十代目に似合うペットを見つけることだろ!!」

 そんなに重要だろうか。
 目をくわっと見開き豪語する少年に、そういえばそんな話もあったなと思い出した。でもおれには重要な任務というよりただの遊び心としか思えない。まあ人によって捉え方は様々だから気にしないけど。

「じゃあ小動物ふれあいコーナーに行かなきゃ。きっと似合うペットがわんさかいるぞ?」
「十代目にそんなチンケなやつは似合ねーよ! 百獣の王ライオンに決まってんだろ」

 獄寺少年はごく当たり前に言ってのけた。全く想像できない。ツナにはリスかハムスターってイメージしかないからな。
 彼はタバコを取り出し吸い始める。口にくわえたまま先端をライターに持っていき、風で火が消えないように空いている方の手でその周りを覆う。

「随分手慣れてるね」
「うるせー」
「いつから吸ってるの?」
「別にお前にゃ関係ねーだろ」
「そうだったな」
「……そんだけかよ」
「え?」
「お前ってホント他人の事情に深入りしてこねーよな」
「まあね。そういう系の話は相手から言わない限り聞かないようにしてるから」
「へぇ」
「自分のされたくない事を他人にするのはどうかと思うし」
「聞かれたくねー事あんのかよ」
「そんなの誰にでもあるだろ?」

 ごまかしついでに笑ってみせる。タバコの煙が鼻腔をくすぐった。
 それからは散々だった。おれも獄寺少年も目立つ容姿だから不良に絡まれたし、その時使用したダイナマイトのせいでライオンの檻が破壊されて中身が逃げ出すし。
 この時おれの脳は動物園がいかにデンジャラスな場所かをしっかりインプットした。



20090123

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