マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ 雪の世界


 ランボさんに起こされた。こんな寒いのに本当に元気だなと感心してしまう。おれの腹の上でぴょんぴょんと跳ねるこの小さな男の子は、まるでカエルのようだ。いや、ランボさんは牛か。もうウシガエルでいいや。とにかく眠い。

「がははっ! 千星はランボさんと遊ぶんだもんね!」
「……眠い」
「もう昼だぞーっ!」
「昼間だからこそ眠い……」
「雪が降ってるぞーっ!」
「………え?」

 布団をガバッと剥いだ。ランボさんが悲鳴を上げて転げ落ちたが、気にしなくて大丈夫だろう。彼はとても打たれ強い子だ。なによりウシガエルだし。
 カーテンを勢い良く開ける。すると目には白銀の世界が飛び込んできた。

「うわ……」

 一気に脳が覚醒した。
 ランボさんは笑い声を上げて部屋から出て行き、隣の部屋のドアを開けるたらしい。ツナの驚いた声が聞こえてきた。
 雪合戦が開始されたのは、これより三十分後のことだった。



「チーム分けを発表するぞ。東軍はツナ・山本・イーピン・フゥ太。対する西軍はディーノ・獄寺・了平・ランボだ」
「待って下さいリボーンさん! なんでオレが10代目と違うチームなんですか!?」
「謎だ」
「迷宮入りスか!?」
「……あれ、なんで千星くんは入ってないの?」
「おれは見てるだけって条件付きでここに来たからだよ」
「そうなんだ……」

 リボーンが来いとうるさかったから何歩か譲り、関わらないという条件付きでついて来た。貴重な睡眠時間が奪われたので、当然の権利だ。

「じゃあみんな頑張ってね」
「どこ行くんだ」
「とばっちりを食らわない所に」

 リボーンにそう伝え、少し離れた木へ近づき、登る。上空からは全体が見えた。折れなさそうな場所に腰を下ろし、渦中の人たちを傍観する。

「んじゃ始めるぞ」

 鎧を着込んだリボーンのやる気のない一言で雪合戦の幕が開けた。しかし、両チームとも動く気配がない。相手の玉を防ぐ雪の壁のようなものに身を隠しているだけだった。
 校庭の真ん中には丸まったリボーンのペット、レオンの姿。この雪合戦はレオンを取った方が勝ちとなるルールだ。レオンは自身の形をボールのように丸く変えていた。
 膠着状態が続くと思われていたが、それを打破しにかかる一人の姿があった。

「了平……」

 拳を構えながらレオン強奪にかかる了平。あの子は玉も持たずに何してんだろうか。集中攻撃されてしまうのが目に見える。
 遊びの誘いがかかる程、了平がリボーン達と仲が良いことを知ったのは今日だった。

「いくぜっ!」

 相手チームの武の放つ豪速球は、真っ直ぐに了平の元へと送り出される。しかし彼はそれを拳で粉砕した。

「そんななまくら玉、この極限ストレートの前ではマシュマロ同然だ!」

 その台詞に、おれは急にマシュマロが食べたくなった。
 了平が次々に雪玉を粉砕する姿を見たイーちゃんは、雪の壁から姿を現す。そして餃子拳という技で、獄寺の投げる雪玉を触れることなく撃墜させた。

「すごいよイーピン!」
「……違うよー、ツナ兄っ」
「え?………うがっ!」
「なんだこの空気は……」

 困惑するツナとフゥ太と武。イーちゃんの餃子拳のギョウザエキスが風に流され三人の鼻腔を直撃しているのだ。
 敬愛するボスのピンチを見た獄寺少年が取った行動。それは、

「十代目、スパイ活動が終了したのでそちらに戻ります!」

 高らかと寝返り宣言をする獄寺少年。彼の攻撃により、元仲間である了平が爆風に飛ばされて気絶した。

「ならば我々も、」
「ボスを、」
「守ーーーるっ!」

 雪の中からモグラのように出てきたのはディーノさんの部下の方々。なんというか、ハチャメチャだった。

「こんなんでいいのかよ審判っ!」
「うん。ぴったり予想どーりだ」

 ツナの叫びにあっけらかんとした表情で告げるリボーン。全ての展開を読んでいたなんて、彼は優秀な策士に違いない。

「つまり、これでボンゴレ対キャバッローネってわけだな」
「ご、獄寺くん?」
「果てな!」

 煌めく白の世界にダイナマイトをばらまく不良少年。対するディーノさんは自慢のムチさばきでそれを全て消火してみせた。

「なっ!」
「どーした? レオンはいただくぞ」
「そうはいかないわ」

 突如会話に割り込んできたのはその場にいなかったはずのビアンキで、彼女はランボさんとイーちゃんを操り出した。

「勝つのは私達、毒牛中華飯よっ!」

 第三勢力の出現により、益々にぎやかになっていく雪合戦だった。



20090114

/

[ 戻る ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -