マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ あいつこそがランキングの王子様

 昨日、肉食獣のいる草原から沢田家に助けを求めてやって来た小動物。名前はフゥ太。本名はあるらしいけれど、こう名乗ったのでそう呼ぶことにする。
 フゥ太とリボーンはツナの部屋であやとりを楽しんでいた。一緒にやろうと誘われが、おれは糸系のものには触れないのでやんわりと断る。

「ただいまー」
「おかえりツナ兄!」
「おかえり」
「ちゃおっス」

 ツナは浮かない表情で部屋に入る。理由を聞けばツナを気に入ったフゥ太が学校まで行き一日中ストーカーをしていたらしい。もちろんおれはその時間は昼寝に勤しんでいたので知らなかった。

「もう学校に来ちゃだめだからなっ!」
「えー……」

 大きな目をうるうるさせてツナを見つめるフゥ太。その姿は某CMの白いチワワを思い出させる。ご利用は計画的に。

「ようツナ! 千星! 元気にしてたか?」
「ディーノさん?」

 突然現れた跳ね馬ボスに、ツナは目を丸くする。

「間違いねぇ。こいつは正真正銘ランキングフゥ太だ。いざ探そうったって尻尾すらつかめねー星の王子様ってとこか」
「こんにちは跳ね馬ディーノ!」

 突然部下を引き連れ現れたディーノさんに、フゥ太は笑顔で返事を返す。今日はツナに用事があるわけでなく、彼はフゥ太と難しい商談話をしていた。
 大量の札束を渡そうとするディーノさんにフゥ太は首を振り、無償でランキングのコピーを差し出す。理由は彼が住民を大事にしているランキングで堂々の一位だったかららしい。確かにディーノさんはそんな感じだなとおれも思った。

「じゃあまたな。サンキュー!」
「せっかくだからツナと千星もいろんなランキングしてもらえばいいじゃねーか」

 ディーノさんが部屋を去ると同時に、リボーンがいつもの無表情のままに呟く。

「え、オレ達?」
「うん! いいよ」
「面白そーです! 新手の占いですかー?」
「ハルちゃん?」

 ディーノさんと入れ替わりに部屋を訪れたのは、ポニーテールが眩しいハルちゃんだった。どうやら雨が降ってきそうだから洗濯物をこんでくれたらしい。すごい行動力のある子だ。
 フゥ太はハルちゃんのチャームポイントランキングをつけていく。ハルちゃんのチャームポイントランキングが終わると、今度はイーちゃんとランボさんのランキングをつけ出した。
 ちなみにイーちゃんとはイーピンのことで、最近そう呼んでいる。理由は特になし。

「ランボはうざいマフィアランキング8万2千266人中ぶっちぎりで1位だよ」
「ぐぴゃ!」

 さすがランボさん。みんなの笑いを取ってくれる。
 その様子を悠長に見守っていると、フゥ太の視線がおれに向けられた。

「………あれ?」
「ん?」
「おかしいな……」

 戸惑いの表情を見せるフゥ太。その場にいる全員が彼に注目する。

「千星兄の名前が載ってない……」
「どういう事だ?」
「そんな目で見るなよリボーン……。おれがマフィアじゃないから、とか?」
「ううん。マフィアじゃなくても出来るよ! ハル姉だって出来たもん」
「じゃあなんで……」

 ツナがおれに視線を向ける。そしてリボーンの眼差しがとても痛い。

「ねぇフゥ太。もしかしてランキングする時は、対象者を見ないとできないの? 名前だけとかは?」
「名前だけわかってても、直接その人を見ないとランキングは作れないよ」
「………そっか」

 理由に気付いてしまった。それはおれの顔と名前が一致していないからだ。
 予想外の出来事に戸惑いを隠せないフゥ太の頭にそっと手を乗せる。

「フゥ太はすごいね」
「え?」
「……すごいよ」

 おれの例でフゥ太のランキングがインチキじゃないことが証明された。この子は、正真正銘ランキングの王子様だったのだ。



20090112

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