マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ A HAPPY NEW YEAR!


「もっとこう、色っぽくしてほしいわ」
「注文多いな……美容室に行ったら?」
「イヤよ」

 虚しくもおれの言葉はスパッと切られた。
 今日はお正月ということで、おれはビアンキの着付けをしている。つまり着物を着せているわけだ。叩き起こされて何をするのかと思えば「着付けできる?」と聞かれ、寝ぼけているおれはうっかり「うん」と返事をしてしまった。

「よく男に頼む気になったね」
「あら、千星はそういうの興味なさそうに見えるんだけど」
「確かにないけどさ」
「ならいいじゃない」
「なんていうか、もっと恥じらいってものを持ちなよ」

 おれは男じゃないからビアンキに性的興味を持つことはないし、一応そっちの趣味もない。
 でも本物の男に頼んだらどうなってるかわかんないぞ? 男は狼だって、師匠と剣がおれに口うるさく言っいたことを思い出した。

「千星苦しいわ。もう少し緩くして」
「はいよ」
「……ねぇ」
「ん?」
「着付けなんて誰に習ったの?」
「昔の知り合いに」
「男なのに?」
「変な物好きがいたんだよ」

 困ったように笑えばビアンキはふーんと言って会話を終わらせた。興味が失せたのか気を使ってくれたのかはわからない。

「───、ふぅ、できた」
「なかなかじゃない。ありがとう」
「いいえ。リボーンも喜んでくれるといいな」

 意地悪に笑ってみせる。するとビアンキは恥ずかしそうにおれの背中を叩いた。かなり痛い。恋する乙女のような表情と、体に来るダメージが全く合っていなかった。
 とにかくおれ達は近くの土手で正月を満喫しているだろうみんなの元へ向かう。正しくは、ベッドへと向かおうとしたおれの首根っこを掴み、ビアンキはみんなの元へ向かった。




「おー、やってるな」

 以前獄寺少年と対峙した土手まで行くと、下の広い芝生ではツナ達とディーノさんアンド部下の方々が臼の周りに集まっていた。二手に分かれてもちを作っているようだ。
 ビアンキはもちろんツナ達のグループに加勢に行く。加勢ではなく、揉め事を起こしに。京子ちゃんとハルちゃんがあんこを作っているのを手伝った。ああ、ポイズンクッキングの完成だ。合掌。

「終了だぞ。そんじゃあ食い比べるからもってこい。まずはキャバッローネのアンコロもちからだ」
「とりあえずは作ってみたが……オレ達の知識じゃあこれが限界だ」
「パサパサしてまずいな。次はボンゴレだぞ」
「うん! これ」

 おれはその様子を離れた所から体操座りで眺める。ツナの笑顔で箱の中のもち──だったものを、リボーンに差し出す。中身を見た途端に彼の顔色が青ざめた。
 それに命の危険を感じたリボーンは夢という世界へ逃亡する。つまり、寝た。それも全人類がびっくりする程に素早く。
 ポイズンクッキングと化したもちの行き場がなくなり、作った本人はボス二人へとその矛先を向ける。危険を察したボス達は逃走を始めた。それを笑顔で見送る人々。あれは笑い事では済まない気がするが、おれは傍観に徹する。

「あけましておめでとうございます。千星さん」
「あ、あけましておめでとうございます。ディーノさん見えなくなっちゃいましたね」
「はは! うちのボスもはしゃいでまだまだガキだな」

 部下の方(名前はわからない)に話しかけられ、新年の挨拶をする。眼鏡をかけた話しやすそうな人だった。
 その近くにいる人は大きめの箱を抱えていた。どうやらおみくじの箱をリボーンから預かったものの、置く場がないので抱えているらしい。
 一つどうですかと進められ、穴の中へ手を突っ込み、無造作に一枚を取って紙を開いた。

「あ、大吉」

 思わず笑みがこぼれた。



20090108

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