マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ 戦闘開始

 ツナ達の登校を見送り、それからベッドに入って長い睡眠を取るのがこの家にいる時のおれの日課だ。しかし今日初めて見送りせずに眠ってしまえば良かったと後悔する。
 忘れていたのだ。厄介ごとがすぐ近くにあることを。

「ふぁ……じゃあ戻るね」
「待て」
「ん?」
「ツナの忘れ物だ。届けてやってくんねーか?」

 彼の小さな手には見覚えのあるペンケースが収まっている。ツナのものだ。
 小さな殺し屋からペンケースを受け取っておれは走る。朝っぱらからツナ家の玄関に来ているディーノさんのたくさんの部下達に「頑張れよ」と声を掛けられた。
 この時、リボーンの口角が上がったことに気づけば良かったのに。

「ツナ! 忘れ物」

 ツナと獄寺、山本の後ろ姿を発見して、おれは滅多に出さない大声でツナの名前を呼ぶ。
 彼は弾かれたように振り返り、目を見開いた。

「え? 千星くん!」
「リボーンから頼まれたんだ。はい」
「ありが……」

 言葉が途切れたのは、ツナの指がペンケースに触れるよりも早く、彼の華奢な体にロープが巻き付いたせいだ。
 そしてツナは光の如く拉致された。車にロープごと引っぱられるその姿は西部劇を見ているような気分にさせられたが、今はそんな悠長に思っている場合ではない。
 真っ赤な高級車はツナを連れて走り去っていった。

「ありゃ桃巨会の車だな」
「リボーンさん!?」
「やくざとはいえジャパニーズマフィアだ。ここは警察にまかせろ」

 突然現れたリボーン。ツナを拉致した相手はやーさんだったらしい。でもそんなことは隣の二人には関係ないようで、車を追って走り始める。関わりたくなかったが、彼らを放っておけるはずもない。葛藤の末、おれも後をついて行った。



「この先にいるみてぇだな」
「てめーらオレの足ひっぱんなよ」

 目の前には質素な扉が一つあり、この奥にツナを拉致した方々がいるらしい。小細工なしの正面突破だった。獄寺少年が合図もなしにドアを開ける。

「十代目は返してもらうぜ」
「は? 何言ってんだこのガキ」
「ここがどこだか分かってそんな口叩いてんのか? あぁ?」
「オレ達はツナの居場所教えて欲しいだけなんだけどよ」

 やーさん達がおれ達を睨みつけて木刀や釘バッドを持ち出す。話し合いの解決は無理らしい。こういう展開になることはもちろん予想済みだ。
 やーさんの一人がおれ達目掛けて襲いかかる。獄寺は懐から大量のダイナマイトを取り出し、煙草で火をつけあちら側投げる。それは見事命中し何人かが負傷し床に倒れる。

「やるね獄寺少年」
「けっ、お前に言われたかねーよ」
「まあまあ」

 仲間がやられて頭に血が上ったやーさん達は、雄叫びと共に一斉に襲いかかってきた。
 おれは特殊警棒を取り出して思いっきり振り下ろす。三倍の長さになったそれを相手の顎や首の後ろを狙って打ち込んでいった。ちゃんと攻撃をかわすことも忘れない。
 横目で他の二人の姿を追うと、二人も敵を圧倒していた。……武ってケンカ強かったんだな。
 動ける人間がいなくなり静かになると、タイミングを見計らったかのように扉がが音を立てて開く。入り口には見覚えのある二人の姿があった。

「……ツナ?」
「十代目! ご無事で!」
「元気そうじゃねーか」

 ツナとディーノさんが一緒に姿を現し、おれはこの戦いが仕組まれたものだと理解する。よく考えればツナが突拍子もなくやくざに拉致されるなんて明らかに変だった。元凶は、リボーンか。関わりたくなかったのに。
 巻き込まれたことに対し、おれの怒りのボルテージが急上昇した。

「ガキども……何してくれてんだ?」
「チッ、次から次へと」

 リボーンを問い詰めようかと思った矢先に組長やトップクラスの面々が出てきて、また戦闘開始のゴングが鳴った。おれは先程よりも特殊警棒を相手に強く殴打していく。それでも怒りが収まらなかった。



20090104

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