マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ そこにあるもの

 眠りから目覚めると、黒いスーツを着込んだ方々に家を占拠されていた。明らかにアッチ側の人達だ。誰かの家に泊まれば良かったと後悔する。
 しかもリボーンに呼ばれてツナの部屋に行くと、黒スーツの方々のトップらしき人が豪華な椅子に座っていらした。おれの人工のものとは違った生まれ持った金髪。つまり、日本人ではない。

「ディーノ、こいつはここの居候の千星だ」
「……こんにちは」
「オレはキャバッローネファミリー十代目ボスのディーノだ。よろしくな」

 ワイルドに笑うディーノさん。ちなみに彼はツナの兄弟子で、つまりはリボーンの元教え子だ。あまりよろしくされたくない。マフィアとかそんな危険な事には関わりたくないのが本心だから。
 ディーノさんはおれを下から上まで、まるで見定めるような視線を送る。そして最後に人工の緑色の瞳を覗き込まれた。

「へぇ、いい目だ」
「そうだろ。いずれはツナの部下にする」
「いや、絶対ならないから」
「ははっ、オレも昔はそうだったぜ! 最初はマフィアなんてクソくらえって思ってた」

 豪快に笑うお兄さん。こんなに若くて明るい人がマフィアのボスなんて、世界も不思議なものだ。

「そういえばツナはまだ帰ってないの?」
「ああ、でもそろそろ来ると思うぞ」

 リボーンの言葉と同時にツナの声が一階から聞こえてきた。ツナも帰ってきた事だし邪魔者のおれは立ち去るとしよう。夕飯の準備を手伝ってくると理由をつけ、部屋を出ていった。



「いただきます。……さー何でも聞いてくれ、かわいい弟分よ」

 辺りはすっかり暗くなり、食卓の席についたおれ達。今日のご飯は焼き魚だ。平和だ。
 しかしおれの隣に座るディーノさんは物騒な話がしたくて仕方ないらしい。ツナは話を振られて嬉しいような困ったような表情を浮かべる。
 おれは味噌汁を一口飲む。うん、さすが奈々さんだ。

「そーいやツナのファミリーはできたのか?」
「へ?」
「ああ。今のところ獄寺と山本、候補がヒバリと笹川了平と……」
「先輩と友達だからっ!」

 悲鳴に似た声をあげるツナ。おれはそれよりもリボーンの視線の方が気になっていた。とても痛い。おれは入らないって言ったはずだよな?

「てか何でリボーンはオレなんかのところに来たんだよ。ディーノさんの方が上手くやっていけそうなのに」
「ボンゴレはオレ達同盟ファミリーの中心なんだせ。どのファミリーよりも優先されるんだ」
「ええっ! ボンゴレってそんなにえらいの!?」

 どんまいツナ。世界は時に優しく、時に残酷なものだ。

「まぁまぁ、そんなにこぼしちゃって」
「あ……」

 奈々さんの声に反応して隣を向くと、ディーノさんの領域が大変なことになっていた。ご飯はこぼれ、味噌汁も……。とにかく、凄い。

「ディーノはファミリーのためとかファミリーの前じゃないと力が発揮できないタイプなんだ。部下がいねぇと運動能力が極端に下がる」
「ある意味究極のボス体質!?」

 ああ、物騒極まりない会話だ。その前に箸を運ぶのに運動能力とかを発揮しなくてもいいと思ってしまった。

「千星はキレイに食べるんだな」
「そうですか?」
「そういえば千星くんって食べ方も上手いし絶対に残さないよね」
「親が行儀に煩かったせいかな。食べ方もそうだけどご飯残したら次の日食事抜きだったし」
「へぇ……」
「そういえば千星、おまえ家はどうしたんだ?」
「あぁ、ちょっと出てきました」
「どうしてだ?」
「──そういう気分だったから、です」

 とりあえず笑っておく。この答えも間違ってはいない。
 風呂場から奈々さんの悲鳴が聞こえたのはその後だった。食卓を囲んでいた全員が急いで風呂場に向かい、その波におれも混じる。
 骨を綺麗に切り取られた魚がその場に残された。



20090102

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