マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ 星空の破片にキス



「うむ、そうだったのか」
「そうなんだよ。お礼したかったんだけどさ、すぐ走っていっちゃって。この辺りにそういう子いない?」
「見たことはないが……」
「そっか……」
「そう気を落とすな! 見つけたら真っ先に教えてやる」

 了平と京子ちゃんに会いたくなって笹川家を訪れたおれは、その道中に起こった出来事を真っ先に了平に話した。
 彼は励ましの言葉と共に肩をポンと叩いてくれた。いつもはあれな性格だけど、了平はなんだかんだで面倒見の良い所もある。

「さすが現役のお兄ちゃん」
「言っている意味がサッパリわからんぞ」
「はは、褒めてるんだよ」

 首を傾ける仕草は子どもらしくて笑える。ここの兄妹は純粋でいいな。不純なものが入っていない。
 了平の部屋のドアがノックされる。部屋主が返事をすると、扉は開けられ京子ちゃんが姿を現した。

「千星くんいらっしゃい! 靴があったからびっくりしちゃった」
「お邪魔してるね。おかえり京子ちゃん」
「京子は知らぬか?」
「へ? なにが?」
「ええい、まどろっこしい! 千星説明しろ!」
「実は今日不思議なお子さんに助けてもらって……」
「えーっ! 私もだよ!」

 突然大声を上げる彼女。声量にも驚きだが、言われた言葉にびっくりする。

「京子ちゃんも?」
「うん! 昨日だったんだけどお金落としちゃって、その子が拾うの手伝ってくれたの」
「そうだったんだ」
「今日学校に来てたよ」

 学校ってことは、恐らく並盛のことだ。でも何でそんな所にいたんだろうか。あの子は中学生のボーダーラインに遥かに届いていないはずなのに。中学校に知り合いでもいるのだろうかと考えるのが、一番妥当かもしれない。

「千星くんは何を助けてもらったの?」
「ん? ああ、これを落としちゃってさ」
「わあ! キレイ……」
「だろ? おれのお気に入り」

 星空の石にキスを落とす。本当に無事で良かった。
 目蓋をゆっくり開けると、視線の先の了平は固まっていて、京子は頬を上気させている。

「どうかした?」
「へ? あ、なっなんでもない!」

 京子ちゃんはブンブンと音がしそうな程に首を振り、茶色の髪がふるふると揺れた。頬はまだ仄かに赤い。

「そっか。でも学校か……まだいるかな」
「その、私が出てくる時にはいなかったよ」

 まだ少し挙動不審気味な京子ちゃん。それが微笑ましくて、くすりと笑った。

「人が集まる所……商店街でも歩いてれば会えるかな」
「へ? 私明日行くよ」
「本当?」
「うん。でも午前中は用事あるから夕方からだけど千星くんも来る?」
「いいの?」
「うん!」

 にっこりと微笑む彼女。よく漫画で背中に薔薇をしょったりするけど、この子の場合は白いふわふわした羽ってかんじだ。
 ちなみにさっきから一言も発していない了平だがようやく調子を取り戻したようで、「そんな女々しいことを男がするなーっ!」と叫んでいた。
 女々しかった?



20090101

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