マリンスノーに祝福を | ナノ


▼ 理由さえ亜空間に消えて


「ランボに保育係をつけるぞ」

 おれが買ったばかりの小説を読んでいると、リボーンが突拍子のないことを言い出した。目線を本からリボーンへと移す。

「保育係?」
「ツナたっての希望だ。オレとしてもあいつの勉強を邪魔されたら困るしな」
「ふーん」
「明日並中で適性検査するから夕方千星も来い」
「え?」

 てっきりどこかのマフィア専属の保母さんあたりを呼ぶのだと思ったんだけど、どうやら違うみたいだ。自分で想像しておいてなんだが、マフィア専属の保母さんって一体何者だ。

「ちなみに獄寺と山本も呼ぶぞ」
「身内にさせる気?」
「まあな」

 にやりと妖しい笑みを放つリボーン。何を考えてるのかさっぱり分からない。もしかしたら何も考えてないのかもしれないが。というかリボーンに保育係をつけた方が良いのでは?

「何か言ったか?」
「ん? いや」
「ならいいけどよ」

 それだけ伝えると小さな殺し屋は何事も無かったかのように部屋を出ていった。

「別にランボさんの面倒くらいおれが見るのに」

 この家にいる時限定になってしまうけど。居候なんだからせめて毎月の食費は出すと言ったのに奈々さんに一刀両断にされてしまったので、それくらいは喜んでするのに。
 とにかく無視をすると後が怖いので、明日学校に行く時はツナの制服でも借りて行こう。



「遅刻だぞ」
「ごめん。寝過ごした」

 予定の時間よりも遅く目を覚ましたおれは、ツナの予備の制服を着て並中の門をくぐった。
 衣替えは終わったので今回は冬使用。ジャケットのサイズも身長が近いせいもありさほど気にならなかった。ズボンの丈も丁度良い。

「勝手に借りた。ごめんね」
「それは大丈夫だけど……もしかして千星くんも受けるの?」
「昨日リボーンに先手を打たれてね」

 困ったように笑ってみせる。ツナに通じたようだ。

「今のところ獄寺はアウトだ。次は山本だから千星は最後な」
「わかった」

 武は大泣きのランボさんの元へ近寄り、キャッチボールを誘う。獄寺少年はともかく武は面倒見良さそうだからこういうの適任かもしれない。
 そう思っていた矢先、ランボさん目掛けてボールを投げる直前に目の色が変わり、そのしっかりした肩からは豪速球が放たれた。痛い。あれは絶対痛い。
 案の定ランボさんの頬にボールが激突する。

「何やってるんですかっ!」
「え?」
「ハル!? なんで!」
「新体操の交流試合に来たんです。泣き声が聞こえたので来てみればランボちゃんは泣いてるし……」
「これにはワケが……」
「たとえ理由があってもランボちゃんをいじめたらハルは許しませんっ!」

 突如乱入を果たしたハルちゃんは、ランボを抱き寄せておれ達を睨みつける。もう保育係はハルちゃんでいいのでは? すごく適役だと思う。
 このまま事が運べば良かったものの、ランボさんはどこからか武器を取り出し自分へと向ける。そして一発、自分に向けて撃ち込んだ。
 ランボさんの姿は一瞬にして消え、何故かお兄さんが出てきた。

「……どうなってんの?」
「千星くん見るの初めてだっけ? あれは十年バズーカっていって、撃たれた人は十年後の自分と入れ替わるんだ」
「入れ替わる?」
「そう。五分間だけね」
「……量子の分解・再構築か。でもリミット付きだと理に適わないよな。時間移動……空間歪曲? いや、あんな爆発じゃエネルギーが全然足らない」
「え、千星くん!?」

 いけない、少し頭がトリップしていたようだ。ネットワークを介すれば座標も……って違うだろ。おれよ、戻ってこい。

「あなたは……」

 声の方に視線を送ると、目を輝かせた十年後のランボさんがいた。すっかり美形になっている。
 おれはあまりの豹変ぶりに見とれていたが、ハルちゃんにはハレンチだと言ってパンチされ、獄寺には意味なくいじめられ、武には角を投げつけられ(本人は落ちている角を拾って渡しただけ)扱いはあまり変わっていなかった。
 あれ、おれって結局何しに来たんだっけ?



20081228

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