童話ぱろでぃ | ナノ


▼ 灰かぶりルカ4

「やーいルカちゃま!」
「ルカちゃまルカちゃま!」
「ううっ、二人ともやめてよぉ……」

 ある意味夢のようなパーティーの数日後、今日もルカは二人の姉たちにいじられています。母親は肉のびっくり市に出掛けているので留守中です。

「……ん?」
「どうしたのよスパーダ」
「なんか外が騒がしくね?」
「ああ、言われてみれば」

 イリアが呟いた直後、玄関が壊れそうな勢いで開きました。

「あ、やってもうた」

 呆然とする三人の耳に、やや間の抜けた声が入ってきます。

「おいラルモ。もっと静かに開けろ」
「しゃーないやん。変なとってが付いてたんやもん」
「ってエルとリカルドかよ」

 ちぐはぐな背丈の二人は王都の兵士のような格好をして玄関に立っていました。

「単刀直入に言おう。一人ずつガラスの靴を履け」
「単刀直入すぎだ!」
「どうせこの展開になることをわかっていたのだろう」
「誰がだよ!」
「キレの良い突っ込みやなぁ」
「あーもう、とにかく履けばいいのね」

 しびれを切らしたイリアが、リカルドの持つガラスの靴をぶんどり足にはめました。

「ちょっと緩いわ」
「次」
「コメントくらいしなさいよ!」
「ほら急げベルフォルマ」
「ったく、履きゃいいんだろ」

 ブツブツと文句を言いながら履きますが、踵がなかなか入りません。

「入らねえよ」
「あーあ、残念や」
「全くだ」
「何が」
「結婚できたのに」
「全くだ、つまらん」
「だから何が!」

 コントを繰り広げる彼らでしたが、ふと後ろから足音が聞こえて振り返ります。そこには王子ルックの連載主人公の姿がありました。

「このガラスの靴が入ったらリズ姉ちゃんと結婚できんになー」
「それ、ほんとか?」

 姉の問いかけに王子は無言で頷きます。
 するとスパーダは、意を決したようにガラスの靴と向かい合いました。

「ぐぬぬぬぬっ」
「ああ! スパーダ兄ちゃんが無理矢理足をはめこんどる!」
「そうだ。漢を見せろベルフォルマ」
「ってそこ普通止めるところじゃないの?」

 イリアは思わず突っ込みました。スパーダは足を赤くしながらも頑張り続けます。そして……

「っ、はいった!」
「兄ちゃんおめでとう!」
「良かったな」

 エルマーナとリカルドは隠し持っていたクラッカーを鳴らして祝福しました。

「リズ! これで結婚できるな!」
「……」
「ヘヘッ、なんだよ赤くなっちまって」

 がしっと手を掴むスパーダがあまりにも嬉しそうな顔をしていたので、リズはほんのり頬を染めました。

「じゃあ俺は新居に行くぜ。じゃあな二人とも!」

 スパーダはそう言い残し、リズやリカルド、エルマーナと共に颯爽と去っていきました。
 家にはルカとイリアがぽつんと残されます。

「みんな行っちゃったね」
「うん……。意味がわからないよ。何この展開。僕ガラスの靴に触ってもいないし」
「ねえ」
「ん?」
「あんたは……。ルカは、あたしと一緒じゃ嫌?」
「……」
「なんで黙ってんのよ」
「そんなわけ、」
「え?」
「そんなわけ、ないじゃないか」

 ルカの一言にイリアが顔を真っ赤にします。
 こうして灰かぶりルカと、ついでにごつい方の姉は幸せに暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし!



2012.01.17

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