▼ 赤ずきんイリア3
※ちょっと性的表現あり。
ハスタはリズの首筋に唇を触れ、一点を強く吸い付きます。
「!」
チクリとした痛みに何をされたのか悟ったリズは、冷や汗を滲ませました。
抵抗を試みますが、現在の体勢では思うようにいきません。気持ちだけが焦る一方です。
「おばあチャン、ねぇ今どんなキモチ?」
唇を離したニセオオカミは余裕の笑みで問いかけます。
声が出れば彼女は「最悪」と答える自信がありました。
「折角のオオカミさん無双なのに、だんまりはつまんないポン」
「……」
「つれないデスね。……あ」
「?」
「やっぱ授血じゃ普通すぎるので、授乳にしましょうか」
とんでもないことを口走ったニセオオカミは、リズおばあちゃんの胸元に顔を埋めます。そして口で器用にネグリジェのボタンを外していくではありませんか。
リズおばあちゃんの警戒が、最大まで引き上げられます。
「心臓、速くなってきたぴょん」
反応を楽しむように顔を上げるオオカミもどき。その唇は弧を描いています。
どんなに身をよじろうとしても、押さえつけられた体はピクリとも動きません。
捕食者と標的。それが今の二人の関係性でした。
「大丈夫、オイラ紳士だから。痛いこともキモチイことも、たーっぷり与えてやんよ」
「……」
「だから安心して食べられなさい。おばあチャン役はそういう運命なんだポン」
「……」
「服を剥ぐのもまた一興。時間をかけて、美味しくイタダキマショウ」
ハスタは艶かしい声で告げると、再び残りのボタンを外しにかかります。
絶望的な状況。膨れ上がる恐怖心。
どうすることも出来ないリズは、ギュッと目を瞑りました。
「リズッ!」
その時、扉が激しい音を立てて開きます。
彼女が驚いて目を開けると、そこにはゼエゼエと肩で息をするオオカミと赤ずきんちゃんの姿がありました。
二人はリズおばあちゃんとニセオオカミを視界に入れ、絶句します。
「赤ずきんチャン。出番はまだ早いデスよ」
気だるそうに顔を上げるハスタ。それによりリズのはだけた胸元が晒されます。
スパーダの頭に一瞬で血が上りました。
「テメェ……」
「ヤダヤダ、台本通りに動いてもらわなきゃ困りますよお二人方。NGなのでテイク2。1時間後に出直してらっしゃい」
「アンタがイレギュラーなんでしょ! っていうかリズから離れなさい!」
「細かいことは気にしないりゅん。まぁ気にくわないってーなら、殺戮フェスティバルの開催だな」
「上等だゴラァ! 切り刻んでやる!」
こうして三人は室内で乱闘を始めました。
テーブルが弾き飛ばされ、タンスは弾丸を浴びます。
一人取り残されたおばあちゃんは、それをベッドの上から呆然と眺めました。
しかし、
「?」
近くの窓がノックするように叩かれます。
視線を送れば誰かが立っているではありませんか。
見知らぬ誰かは手招きをしました。
リズおばあちゃんは三人に目を向けます。彼らは戦闘の真っ最中で、赤ずきんちゃんの銃弾が今にも飛んできそうです。
「……」
リズおばあちゃんは心を決め、窓を開けて家から脱出しました。
2012.06.21
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