▼ またあした
※連載夢主は第三章仕様となっています
※付き合ってる前提
※スパーダ視点
くそ長い授業が終わり、ようやく待ちに待った下校時間になった。
カバンをひっ掴んで足早に教室を出る。騒がしい廊下を進んでいくと徐々に目的地が近づき、開け放たれた入り口にたどり着いた。
「リズー、帰るぞ」
入り口から呼び掛ければ、ざわつく教室内でもオレの声を捉えたらしい。すでに帰り支度を進めていたリズが教室の入り口へ視線を寄越す。
「うん」
短くうなずくとリズはバッグの上に乗る白いマフラーを掴み、首に巻きつけ始める。こいつの瑠璃色の髪には白がよく映えるんだよな。
支度を整え終え、バッグを片腕にかけてオレの待つドアの前へとやって来た。
「ごめんね。おまたせ」
「ん、じゃあ行くぞ」
「どこか寄りたいところある?」
「今んとこ特には無ぇな」
「じゃあゆっくり帰ろうね」
そう言ってほのかに笑うリズは可愛い。目に入れても痛くねェくらいだ。
愛しさが膨れ上がるのと同時に、同じクラスになれなかった自分の運をマジで呪いたくなった。
「……そろそろ行くか」
いつまでもここにはいられない。クラス連中の興味本位な視線が正直ウザいし、これ以上リズを野郎共の目に晒したくない。
オレはこっちを見てる野郎共をひと睨みした後、リズを呼んで教室を後にした。
鮮やかだったオレンジ色の空はもう薄暗くなり、ひんやりとした空気が体に染み込んでいく。
付き合い始めた頃からリズをアパートに送るのがオレの日課になっていた。二人きりになれる学校の帰り道が、一日の中で一番安らぐ時間だ。
「今日ね、数学の授業が自習でラッキーだったの」
「へぇ……羨ましいぜ。オレは居眠りしたらセンコーに目ぇつけられて、国語の長文をひたすら読まされたっけ」
「それはお気の毒……。というか、スパーダくん疲れてたの?」
「いや、昨日テレビ見てたら夜更かししちまってよぉ」
駄菓子工場の特集が面白かったと言ったら、リズは少し呆れたように笑った。
そんな他愛のない話を繰り返しながら歩いていく。ダチとなんの話をしたとか、昼飯は何を食ったとか。
幸せな時間はあっという間に過ぎていった。学校から近い距離にあるリズのアパートは、気づけばもう目の前。
「送ってくれてありがとう。今夜バイトだよね?」
「おう。リズは次いつ?」
「明日だよ」
「そっか。あんま無理すんなよ」
入り口で立ち話をする。
リズはバイト代と知り合いの援助で生活しているから、他ののヤツらよりシフトを多く入れてる。だから体を壊さないか、オレとしてはそれが心配で仕方ない。
「スパーダくんこそ。今月シフト増やしたんでしょ?」
「まぁな。早く家から出てェし……それに、大学行ったらリズと二人暮らしするって夢あるし」
言いながらリズの体に両腕を回す。ギュッと力を込めれば、腕のなかに収まるリズの感触。
「っ、スパーダくん」
「ん?」
「みんなに見られちゃうよ……」
「見せつけてやればいいだろ?」
「……もう」
観念したらしいリズはオレの背中に手を回した。鎖骨あたりにリズの頭がこてんとあすげられ、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
ずっとこのままいたい。でもオレ達はまだ学生で、その願いは若さゆえに引き裂かれてしまうのだ。
「……よし、充電完了!」
「ふふ、満タンになった?」
「バッチリだぜ」
名残惜しくないといえばウソになる。でもそう言ったらオレに甘いリズを困らせちまうから、理性を総動員させて体を離す。
「ちょっくらバイト頑張ってくるわ」
「うん。じゃあ、またあした」
そう言って小さく手を振る愛しい彼女。自然と目が細くなる。
「ああ。またあした」
リズと一緒にいられる明日が途切れることなく続けばいい。
オレは彼女の笑顔に見送られながら、心の底から強く願った。
2013.04.07
『連載夢主でスパーダ学パロ』というリクエストを頂きました。
お届けするのが遅くなり大変申し訳ありません!
本編や続編よりも先に付き合っちゃってたり。ラブラブさせたかったんです。……ちゃんと出来てますかね?
かるなさま、リクエストありがとうございました!
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