企画部屋 | ナノ


▼ スリップ注意!

※連載夢主は第三章以降の設定になりますのでネタバレ注意です。



 ここはテノス近くのギルドダンジョン。旅の資金が減り続け、リズの提案によりギルドで資金を稼ごうと立ち寄った。
 依頼を受けた魔物の討伐を終えて帰路につく。しかし凍った地面に仲間達は苦戦を強いられており、

「ひゃん!」
「うわっ」

 次々と転倒者が続出していた。

「いててー……スマンなぁルカ兄ちゃん。巻き込んでもうた」
「う、平気だよ」
「怪我はない?」
「リズ姉ちゃんおおきにー」

 尻もちをつくエルマーナには近くにいたリズが手を貸し、小さな体を起き上がらせる。

「おいルカちゃま」
「わっ」

 ルカを起き上がらせた不良貴族はニヤリと笑い、低い位置にある少年の肩に腕を回した。

「色気もへったくれも無ぇコケかたしやがって。そんなんじゃロマンスの神サマは降りてこねェぜ?」
「転ぶことにロマンスはいらないと思うけど……」

 スパーダの言葉に苦笑するルカ。
 このとき、スケベ大魔王スパーダにまさか本当に神様が降りてくるとは思いもしなかった。



 遭遇した魔物との戦闘を終え、一行は再び出口を目指す。スパーダも仲間同様歩き出そうと足を踏み出した。
 しかし氷の地面に足を滑らせ、体がぐらりと前に傾く。

「うぉっ」

 あ、コケる。そう思った。誰かの声が間近で聞こえる。
 地面にへの激突に耐えるようスパーダは目を瞑った。しかし倒れた衝撃はあったものの、予期していた痛みにはやって来ない。

「……?」

 スパーダは不思議に思う。硬いはずの地面が何故かやわらかいのだ。
 片手が弾力のある『なにか』に触れた。動かしてみれば、むにっとした感触が手のひらいっぱいに伝わる。

「やわらけェ……」
「す、すすっスパーダ!」

 しみじみと感想を述べれば、遠くでルカが動揺している。どうしたんだろうと思った矢先。

「スパーダく、ん」

 スパーダの体の下から聞き覚えのある声がした。慌てて上半身を起き上がらせれば、倒れているリズの姿が。

「リズ!?」

 何故痛みがやって来なかったのか、スパーダは瞬時に理解した。近くにいたリズを巻き込み下敷きにしてしまったのだ。
 手のひらに感じた弾力のあるものの正体。それは……。

「っ、悪ぃ!」

 スパーダはバッと片手を離す。

「ううん、大丈夫。それより怪我はない……?」
「バカ! お前が怪我してっかもだろ! 待ってろ。今どくか、らっ」

 急いで立ち上がろうと地面につく膝に力を入れる。
 しかし場所が悪かった。彼の行動を邪魔するように、またもや膝をつるりと滑らせてしまう。

「!?」

 その結果、もう一度リズの体に覆い被さった。
 潰さないように彼女の顔の横で両ひじをつきガードをしたが、体は密着している状態だ。
 顔は互いの息がかかるほど急接近している。二人はカッと頬を赤らめた。

「ま、マジで悪ぃ」
「大丈夫……。その、すごく近いけど」
「ゴメン。今どくから」

 今回はゆっくりと体を離していくスパーダ。リズの太ももの内側を彼の足が擦り、ピクリと体が反応をした。
 慎重に体を離していったこともあり、無事滑ることなく立ち上がる。

「ほらよ」
「ん、ありがとう」

 倒れたままのリズに手を貸し、ぐっと力を入れて起き上がらせた。

「姉ちゃん災難やったなぁ、おっぱい揉まれて」
「とにかくこのケダモノから離さなくちゃ!」
「エルもイリアもそのへんにしなさい。怪我がないか見るから、リズはこっちに来てちょうだい」

 女性陣に手を引かれ、リズはスパーダから離されていく。

「ベルフォルマ」
「んだよ。オッサンもオレを責めるのか?」
「いや、あれは不可抗力だろう。それより」

 スパーダをちらりと視界にとらえ、リカルドは本音を吐く。

「随分と良い状況だったんじゃないか?」
「……だよなぁ。あの時は焦っちまったけど」

 スパーダは思い出す。リズの体のラインと、手のひらに残るやわらかな感触を。

「正直、もっと堪能しとけば良かったぜ」

 ため息と共にがくりと肩を落とす。
 これがロマンスの神様が舞い降りた、スケベ少年の結末だった。



2013.03.12
『スパーダでラッキースケベ的な微エロ』というリクエストを頂きました。
微エロに仕上がっているか微妙だったので、今回は年齢指定にせず一般公開にしました。
なにやらスパーダとの絡みが少ない気が……。そして遅くなってしまい申し訳ありません。
友紀さま、リクエストありがとうございました!

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