
ガーデン前日譚
にばんめのきらい
寂しさがしあわせの指針
ベビイドールは泣き虫かもね
神さまの踵は春を待つ
うずく
まばたきの合間に恋はゆらめく
26日目の一目惚れ
その睫毛についたきらきら舐めてもいい?
ぼくら史上最高の恋であれ
花瓶にためた涙で慈しむ
ぼくの知らないすきなもの
モーニングララバイ
恋した火曜日と幼気な瞬き
青い明日への哲学
まっさらなカレンダーで語り合う
あたしのためには泣けないひと
折れたスプーンでかき混ぜた星屑
きみの記す言葉は味がしない
ぼくの目が愛をつぶやいてしまうので
ひどくあまい
ひっくり返ったきらいを抱えたまま
ぬれた花ごと包むにはもどかしい恋だ
レースカーテン越しの秩序
ぼくらのためには咲かない花を
薄暗い廊下。耳を澄ますと聞こえる鼻歌。駆け足の青春には少し急すぎる階段。私だけ先に汚れてしまったお揃いのキーホルダー。空は高いのに、君には低すぎた天井。誰も興味を示さないピアノは正しい音階で春を告げて、着心地の良い体操着は今はもう小さくなっても買い替えることもない。記憶の片隅から追い出した桜色の君の頬は、きっと今でも甘くて淡い恋の味がするんだろう。あともう少しだけ柔らかくいられたら、ひとりぼっちでベランダから眺めた街も、光に彩られた夜の帰り道も、きっとずっと優しくあってくれたはずなんだ。
低い空に跳ね返って聞こえてきた笑い声が私を包む。数秒に一度ちろちろと頬を濡らす何かに気付かないふりをする私に、君は遠くから困ったように視線を寄越してくるだけだった。日ごとに青はアンバーローズに様変わりし、白い影は緑を帯びてそれからライラックに落ち着いた。だけどそれだって数時間も経てばホリゾンブルーになるかもしれない。君は深い眠りの底で、期待するように私を呼ぶけれど、正しい答えを知らない私は首を横にふることしかできなかった。朝も夜もずっとずっと笑い声に包まれて、気付けばそれが子守唄のように心地好く感じる。あのひとはまだ折れたスプーンで宙を混ぜつづけていて、星の屑が数を増す様を楽しんでいた。地球は遠くで未来よりもずっとずっとゆっくり回っているようだった。私たちがまだ幼い頃は地球は一秒だけ時間を先取りしていたらしい。大人たちは懐かしむように太陽の光を反射させるあれをみつめているけれど、それより私たちはホリゾンブルーが燈に変わるかどうかその話に夢中だった。ほら君がまたこっちを見る。折れたスプーンを綺麗なフォークに替えてあげる。白は霞んだ視界なら星屑になれるし、笑い声に合わせて歌を歌えばそれはもうおもしろくて鮮やかな記憶をつくるのだろう。
◎お気に召した言葉があれば抜き出してご使用ください

