アクマイザー

二番目


※デフが生き残った場合パラレル

「間近でみると男前になったもんだなァ!お兄ちゃんの方は美人タイプだったけど」
出会うなり、そんな事を言い出した壮年の男を、デフテロスは睨んだ。
場にそぐわぬシルクハットを被り、へらりと笑う顔には無精ひげがまばらに残っている。
ハーデスのアトリエは居城の最深部であるだろうに、敵を目の前にして緊張感の欠片もみせないのは、この冥闘士の性格なのか余裕ゆえか。
そのおちゃらけた態度だけでなく、何かを嘲笑うかのような目がデフテロスを苛つかせた。
「アスプロスを、兄を知っているのか」
「殺してしまったのに、お兄ちゃんのことが気になるの?二番目くん」
「!」
なおも笑いながら答える顔へ殴りかかったが、ひょいと避けられてしまう。
相手は天魁星だ。怒りで血の上った拳では不利を招くと判っていても、むかつきを抑える事が出来ない。この男がわざと煽っているのに気づいてもだ。
「弟思いの可愛いお兄ちゃんだったな!俺が二番目は危険だと教えてやっても、最初は『デフテロスは違う』って反発してんの。でも根が素直なんだろう、闇を吹き込んだら反応が良くてねェ」
言葉と共に、見せ付けるような過去の映像が脳裏へ流し込まれてくる。
まだ聖闘士になってもいない兄の中へ注がれるメフィストフェレスの闇。いいように翻弄され、かき回され、そして侵食されていくアスプロス。杳馬の腕の中で兄がくたりと抱かれている映像を見せられるにいたり、デフテロスの怒りは爆発した。
「貴様…!」
「うわ、いきなりキレるなよ!お兄ちゃんを手に入れたのが『一番目』でなかったからって、そんなに怒る事無いだろ!」
室内をデフテロスの小宇宙とマグマが大渦となって吹き荒れている。しかし、破壊されていく部屋のなか、杳馬は慌てているようで楽しんでいるのが見えみえだった。
「だって弟くん、まだ『二番目』にもなれてないんだろ?残念だったなァ、今ではあのお兄ちゃん、君の事が疎ましいだけだぞぉ」
「違う!」
「違わないって。お前さんだってそうだろ?お兄ちゃんが邪魔だったんだろ?殺してしまうくらいだもんなあ!」
メフィストフェレスは笑い続ける。そして、必殺技のマーベラスルームが炸裂した。
(…この男だけは絶対に殺す。)
杳馬の放った時空の渦に巻き込まれながら、デフテロスは憎しみを胸に刻み込む。そして兄の名を魂で叫んだ。

(2009/12/11)


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