アクマイザー

食人鬼


聖闘士が死んだ後は、その想いや魂が聖衣に宿ることがあると昔聞いた気がするが、あれだけアスプロスの血を吸ったはずの双子座聖衣には、当然ながら兄の魂は降りてこなかった。
俺の目の前にあるのは、からっぽの死体。
死したのちのアスプロスの魂は、多分俺のことなんて微塵も振り返らずに冥府へ降りたのだ。
「お前の光になりたかった」
呟いても、死体は何も答えない。綺麗だった兄の髪にこびりついた血が、そろそろ乾いてどす黒く変色している。
みじめなものだ、と俺は思った。
死したのちも邁進を止めない兄と、鬼となる自分。
兄を止める方法を何度考えても、やっぱり力づくしか思い浮かばない自分に笑いが漏れた。穴の開いた死体の胸へと顔を寄せ(この穴は俺があけたのだ)顔を突っ込むと、そこには確かな肉と血だけがあった。

(2009/11/13)


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