アクマイザー

闇の林檎2


『何であれ1つ、お前の命令を聞いてやろう』
黒サガのその言葉を、アイオリアは何度も思い出していた。
(自分をからかうための、悪質な嘘かもしれない)
そう考えかけて首を振る。
サガは、嘘や隠し事はするかもしれないが、約束は破らない。
(ならば、何故あのような事を言ったのだろう)
いくら考えても、答えが判らなかった。
深く思索するのは、得意ではない。まして、他人の思惑を推し量るのは無駄なことのように思えた。
それならばいっそ、単純に自分の望みを伝えても良いのではないか。
「俺が望むこと…」
呟くアイオリアの目に、静かな決意が浮かんだ。

「決まったようだな、アイオリア」
夜更けに訪れた双児宮では、獅子の来訪を予見したかのように、黒髪のサガが入り口の柱にもたれ掛りながら待っていた。
「お前の望みは何だ?」
彼の紅い瞳を睨み返し、アイオリアは低く告げる。
「兄さんに、勝ちたい」
ほう、と黒のサガは目を光らせた。
「お前の兄は、時期教皇となる男だ。黄金聖闘士の中でも、最も優れた者しか付くことの出来ぬ地位を約束されたその男に、お前は勝つつもりなのか」
「関係ない。俺は兄を、アイオロスを超えたい」
「なるほど」
サガは寄りかかっていた柱から離れ、アイオリアの前へ立った。
「精神面については、私にはどうしようもない。それはお前が自分で鍛えるしかないし、優劣の決め方も判らん」
そう言いながらも、サガは楽しそうだった。
「だが、戦闘面でという限定つきならば…サジタリアスに勝てるよう、私がお前を鍛えよう」
私自身が勝つよりも、お前を通した方が面白そうな事であるしと、サガは付け加える。そのサガへ、アイオリアは冷たく言い放った。
「言っておくが、俺はお前のことも超えるつもりでいるからな」
「それは楽しみだ。せいぜいしごかせて貰おうか」
アイオリアは暫し黙った後、ぽつりと付け加えた。
「…本当に、出来るだろうか」
「私とお前が組めば、出来るだろうな」
黒サガは、心底楽しそうにまた笑った。

(2009/4/10)


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